交通事故の無過失責任!過失がなくとも損害賠償を負う可能性がある?

2019年02月04日

交通事故における過失割合とは、事故の当事者それぞれに対する責任の割合を指したものです。一般的に、過失が大きい方が「加害者」小さい方が「被害者」というイメージでしょう。

しかし、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」)では、過失が小さい、または認められなかった者に対して損害賠償を請求する「無過失責任」というものがあります。

そこで今回は、交通事故の「過失責任」「無過失責任」について、詳しく解説していきます。

民法は「過失責任」

交通事故に限らず、何らかの不法行為によって損害を受けた被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。

損害賠償請求が可能となる不法行為とは、一般的に民法第709条および第710条によって定められています。

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

民法 – e-Gov法令検索

第709条にあるように、民法においての損害賠償請求が可能となる原因は、「故意または過失によって」不法行為が行われた場合に限ります。故意とは「何らかの損害が発生することは分かっていながらも、行為を行う心理」のことをいい、過失とは「注意を払うことによって損害発生を妨げることができたにも関わらず、結果として損害を与えてしまった」、いわゆる「不注意」のことをいいます。

つまり、民法では故意または過失による不法行為ではないと認められた場合、損害賠償を負わなくてもよいということです。故意の場合では損害賠償責任を負うことは当然といえますが、きちんと注意を払いルールを守っていれば、損害賠償は支払わなくてもよいということになります。

自賠法は「無過失責任」

交通事故による損害賠償は、交通事故の被害者救済を主な目的として制定された「自動車損害賠償保障法(自賠法)」によって定められています。

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自動車損害賠償保障法 – e-Gov法令検索

過失がないのに損害賠償を支払うの?

上記の自賠法第3条の前半部分には、民法で定められている「故意又は過失によって」という文言がありません。したがって、たとえ交通ルールに違反することなく、正常な運転をしていたとしても、損害賠償責任を負わなければいけないと捉えることができます。

たとえば、あなたが赤信号で停車していた際に、わき見運転をした後方車に追突されたとしましょう。あなたは交通ルールをしっかりと守っているため、過失は認められないと考えられます。しかし、あなたは怪我を負わず、相手のみが負傷した場合、あなたは相手に対して損害賠償を支払わなければいけない可能性があるのです。

交通事故で「無過失」を証明する方法

まったく過失のない者が損害賠償責任を負うことになっては、交通ルールをしっかりと守っていた運転者に対して大きな不利益が生じることになります。

そこで、自賠法の第3条にはただし書きが設けられています。

ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

自動車損害賠償保障法 – e-Gov法令検索

つまり、以下3つの条件が認められることによって、無過失責任を負う必要がなくなるということです。

  • ①自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
  • ②被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと
  • ③自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと

これらの条件を証明するには、ドライブレコーダーを使うのが有効な手段だといえます。
それでは、どのような場合にそれぞれの条件を立証することができるのでしょうか。

①自己および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと

自動車の運転をするにあたって、道路の速度制限や一旦停止など、道路交通法で定められている法令をしっかりと守っていることを証明できた場合、損害賠償責任は課せられません。

②被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと

損害賠償の支払いを受ける者が、交通事故にあう可能性がある行為をしていたと証明できれば、損害賠償責任を負う必要がなくなる可能性があります。

例えば、赤信号での横断や、歩行者が横断歩道以外を渡っていたという行為を証明できればいよいのです。ただし、自動車対歩行者の交通事故では、自動車の過失が一切認められないということはないといえるでしょう。

③自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと

運転者の自動車が車両点検などをしっかりと受け、故障箇所もなく整備も万全であった場合、損害賠償責任を負う必要がなくなる可能性があります。しかし、車検をしっかりと受けていない場合や、整備を怠っていた場合は、さらなる責任を課せられる可能性があります。

交通事故の損害賠償には何がある?

もしも、自身に過失がないにも関わらず損害賠償責任を負うことになってしまった場合、どのようなものを支払わなければいけないでしょうか。

交通事故の被害者に対して支払われる損害賠償は、大きく分けて3つ。

  • 積極損害
    交通事故によって被害者が出費を余儀なくされた場合に発生する損害。
  • 消極損害
    交通事故にあったことによって、被害者が本来得られるはずであった収入や利益が減少した場合に発生する損害。
  • 慰謝料
    交通事故にあったことによって被害者が受けた精神的苦痛を、加害者が金銭で補ったもの。

損害賠償について詳しくは、以下のリンクをご覧ください。
▶︎参考:交通事故の被害者に支払われる損害賠償について、詳しく知りたい方はコチラ!

交通事故の無過失責任についてまとめ

いかがでしたか?今回は、交通事故で過失が認められていない場合でも損害賠償責任を負わなければいけない「無過失責任」について詳しくご紹介しました。交通事故は、いつどんな時に起こるか誰も想定することはできません。しかし、日頃から安全運転を心がけることで、交通事故による被害は防ぐことができます。