交通事故で負った怪我を治療する際、「治療費はどうなるの?」と不安になりますよね。交通事故の被害者は、加害者に対して、損害賠償を請求することができます。損害賠償を請求すると、被害者は、治療費や通院交通費を負担することなく、通院することができます。
請求できる損害賠償に含まれているものは、治療費や通院交通費だけではありません。慰謝料や休業損害など、たくさんあります。また、損害賠償にはいくつかの種類があり、それぞれによって計算方法や、支払われる金額が異なります。一口に損害賠償といいましても、実はとても奥が深いのです。
保険会社との示談の際に、被害者が損をしないためにも、損害賠償の内容を理解しておくことはとても重要です。
この記事には、
- 損害賠償とは?
- 請求できる損害賠償の種類
- 種類別の計算方法
- 損害賠償の請求方法
- 賠償金額に納得いかない場合
など、損害賠償を請求する際に、被害者が知っておくべきことについて書かれています。
損害賠償とは?
損害賠償とは、交通事故により損害を受けた者(被害者)に対して、損害を与えた者(加害者)が、その損害の埋め合わせをすることです。
▶︎参考:交通事故で最も多い怪我「むちうち」について詳しく知りたい方はこちら!
▶︎参考:むちうちによる吐き気…原因について詳しく知りたい方はこちら!
請求できる損害賠償は3種類
交通事故の被害者が請求できる損害賠償は、主に3つ。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。
積極損害
交通事故にあい怪我を負った場合、被害者は怪我を治療するために、通院や入院をしなければいけませんよね。積極損害は、交通事故が原因で、治療費や通院交通費などの出費を強いられた場合に、発生する損害のことをいいます。
積極損害には、
- 診察費
- 治療費
- 入通院費
- 通院交通費
- 手術費用
- 器具などの購入費
などが含まれています。
▶︎参考:保険会社から治療費を打ち切られることもある?治療費打ち切りの対処法とは?
消極損害
消極損害とは、交通事故にあわなければ、被害者が得ていたはずの利益の損害のことを指します。消極損害には、休業損害と、逸失利益の2種類があります。
休業損害
交通事故で怪我を負い、入通院で仕事を休んだ場合、休んだ期間の利益は減ってしまいます。休業損害は、入通院のために仕事を休業し、本来得られたはずの利益を得られなくなった際に、休業期間の利益を補償するものです。
逸失利益
交通事故の怪我は、後遺症になってしまう場合があります。後遺症になったことで、労働能力が低下し、思い通りに働くことができなくなるかもしれません。逸失利益は、後遺症が残らなければ、本来得られるはずであった所得の減少を、補償するものです。
慰謝料
慰謝料とは、交通事故によって被害者が負った、精神的・肉体的損害に対して支払われるお金です。慰謝料には、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の2種類があります。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、入院または通院を強いられたことにより、被害者が受けた精神的・肉体的苦痛を、補償するものです。交通事故にあったせいで、通院をしなければならなくなった被害者に対する、迷惑料のようなものです。
後遺障害慰謝料
交通事故の怪我は、後遺症になる場合があります。後遺障害慰謝料は、後遺症が残ってしまったという精神的・肉体的苦痛を、補償するものです。
後遺障害には、1級から14級までの等級があります。この等級が認められると、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
▶参考:後遺障害等級認定の申請方法と、後遺障害慰謝料の請求方法
自賠責基準を使った慰謝料の計算方法
交通事故の損害賠償の計算方法には、3つの基準があります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
今回は、自賠責基準を使った計算方法をご紹介します。
自賠責基準
自賠責保険とは、全ての運転者に加入を義務付けられている保険です。自賠責保険は、人身事故にのみ適用され、物損事故には適用されません。
自賠責基準は、交通事故で怪我を負った被害者に対して、最低限の補償をすることを目的とした基準です。最低限の補償のため、被害者に支払われる金額は、3つの基準の中で1番低くなっています。通院1日につき4,200円の慰謝料が発生し、限度額は120万円です。
任意保険基準
任意保険とは、運転者が任意で加入できる保険です。また、慰謝料の総額が、自賠責保険の限度額を超えてしまった場合、補償できなかった分を、任意保険会社が補っています。
任意保険基準は、被害者の通院日数や、通院期間によって金額が変動し、各保険会社によって基準が異なります。
弁護士基準
「赤い本」や「青い本」と呼ばれる法律書を基に、弁護士会が発表している基準です。
任意保険基準と同様に、被害者の通院日数や通院期間によって、金額が変動します。
弁護士基準は、3つの基準の中で、最も高額な基準です。
自賠責基準を使った入通院慰謝料の計算方法
入通院慰謝料の計算方法は、
① 治療期間(入院期間+通院期間)
② 実通院日数(入院期間+実通院日数)×2
それぞれを比べ、少ない方に4,200円をかけて計算を行います。
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例)交通事故の怪我で、80日入院をし、140日通院(実通院日数は120日)をした場合
① 治療期間 80+140=220
② 実通院日数 (80+120)×2=400
治療期間の方が少ないので、220×4,200=924,000
この場合の入通院慰謝料は、924,000円となります。
自賠責基準を使った後遺障害慰謝料の計算方法
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級によって決まります。交通事故の怪我で最も多いといわれている、むちうちが後遺障害になった場合、後遺障害等級は、一般的に12級または、14級といわれています。
後遺障害等級12級で、自賠責保険基準を使うと、支払われる後遺障害慰謝料は93万円、14級の場合は、32万円となります。
▶︎参考:慰謝料3つの基準と後遺障害慰謝料の請求方法
損害賠償の請求方法
損害賠償を請求するには、加害者側の保険会社に、示談書を提出する必要があります。
加害者側の保険会社と示談が終了すると、加害者側保険会社から被害者へ、示談書の案が送られてきます。示談書の案には、事故発生日時や事故発生場所、賠償金の支払い額や支払い方法が記載されています。
▶︎参考:示談って何?
被害者は、送られてきた示談書の案をよく読み、納得したら署名・押印をし、加害者側の保険会社へ送り返します。
▶︎参考:示談交渉で納得いかない場合はどうする?
加害者側の保険会社は、返送された示談書の事務的な処理を行います。そして、被害者の指定した口座に賠償金を振り込みます。
示談書の案が被害者に届いてから、賠償金が振り込まれるまで、約2~3週間の期間を要するといわれています。
▶︎参考:加害者が保険会社に入っていない場合、示談交渉は誰が行う?
▶︎参考:妥当な賠償金を受け取るために知っておくべき自動車保険の仕組みとは?
損害賠償の内容に納得いかない場合は?
被害者と示談交渉を行うのは、あくまでも加害者側の保険会社です。加害者側の保険会社が、被害者にとって、有利に話を進めてくれるということは、少ないでしょう。示談交渉の際、被害者が、提示された賠償金額に対して納得がいかないことは、よくあることです。
賠償金額に納得がいかない場合や、妥当な金額か分からない、という場合は、弁護士に示談交渉を依頼するとよいでしょう。弁護士を代理人にすることで、弁護士基準を使っての賠償金をもらえる可能性が高くなります。また、妥当な損害賠償の算出もしてくれます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。交通事故の被害にあったら、被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。被害者が損をせずに、納得のいく賠償金を獲得するためにも、損害賠償の内容についてしっかり理解しておきましょう。