交通事故の被害にあい、怪我を負ってしまったら、病院で治療を受けなければいけません。
治療期間は怪我の程度によって異なり、3ヶ月程度で治る場合もあれば、6ヶ月以上経っても治らない場合があります。
通院を続けていくうちに、「治療費は誰が支払うの?」「慰謝料はどれくらいもらえるの?」などの疑問を持つ方もいるかと思います。
今回は、
- 交通事故後は病院へ行くべき?
- 治療費や慰謝料は誰が支払う?
- 慰謝料の金額を把握したい!
- 慰謝料を増額させる方法は?
など、交通事故による怪我の通院先や治療費、慰謝料に対する疑問を解説していきます!
もくじ
交通事故後は必ず病院へ!
交通事故にあったら、痛みや違和感がなくとも、必ず病院へ行きましょう。交通事故直後は脳が興奮状態に陥るため、痛みや違和感を感じにくくなっています。したがって、交通事故後、時間が経過してから症状があらわれるケースもたくさんあるのです。
交通事故後、時間が経過してから痛みがあらわれ、病院へ行ったとしても「本当に交通事故が原因の怪我なの?」と疑われてしまう場合があります。交通事故と怪我との因果関係を認めてもらえないと、損害賠償の請求ができなくなってしまう可能性があります。
交通事故後、体に変化がなくとも病院へ行くことは、怪我の早期発見だけではなく、交通事故と怪我との因果関係を明確にするためでもあります。
病院での治療内容
病院では、医師が治療を行います。
治療内容としては、レントゲンやMRIなどの精密検査機器で、骨の異常を検査します。切り傷やすり傷などの外傷に対する治療を得意としていて、必要に応じて手術を行います。治療を受けても症状が緩和されない場合は、痛み止めの薬や湿布などの処方をしてくれます。
精密検査機器での「画像診断」や「手術」、痛み止めや湿布などの「投薬」は、すべて治療行為となり、医師のみが行えます。
診断書の取得を忘れずに
病院で診断を受けたら、医師に診断書を作成してもらいましょう。
診断書は、交通事故と怪我との因果関係を証明するための書類です。病名や症状、治療期間の目安や病院名、医師名などが記載されています。
今後の手続きにも関わってくる重要な書類となるため、自覚症状を的確に伝え、納得のいく診断書を取得するようにしましょう。
病院以外の通院先は?
交通事故による怪我は、病院で治療を受け続けていても、症状が緩和されない場合があります。また、時間的な問題で、病院への通院を続けることが難しいこともあるかと思います。
「病院では異常なしと言われたけれど、痛みが引かない」「仕事帰りだと病院の営業時間が終了していて、通えない…」などお悩みの方は、転院を検討してみましょう。
病院以外の通院先には、整骨院と鍼灸院があります。転院をする際は、加害者側の保険会社に連絡し、許可を得てからにしましょう。
整骨院での施術内容
整骨院では、柔道整復師が施術を行います。
施術内容としては、痛みのある箇所や周辺に直接触れて施術を行う「手技療法」が主に使われます。他にも、電気や超音波などの物理エネルギーを利用した「物理療法」、体を動かすことで身体機能の回復を高める「運動療法」があります。
整骨院では、体に直接触れて施術を行うため、レントゲンやMRIには写らない症状を見つけてくれる場合があります。また、整骨院によっては土日も営業していたり、夜遅くまで受け付けを行っているところもあります。
鍼灸院での施術内容
鍼灸院には、はり師ときゅう師が在籍しています。鍼の施術は「はり師」、灸の施術は「きゅう師」が行います。
人間の体には、約365以上のツボがあるといわれています。鍼灸院では、このツボに対して鍼や灸で刺激を与えます。ツボに刺激を与えることによって、リンパや血流の流れが良くなり、痛みの緩和を期待することができます。
治療費や慰謝料は誰が支払う?
通院期間が長引くと、治療費や慰謝料について、疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。「治療費がかさんでしまうから、通院を控えようかな…」と不安になるかもしれません。
しかし、基本的に被害者が治療費を負担する必要はありません。なぜなら、交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求できるためです。損害賠償とは、交通事故によって様々な損害を受けた被害者に対して、加害者がその損害の埋め合わせを行うことです。
被害者が請求できる損害賠償は、3つ。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
積極損害
積極損害とは、交通事故によって出費を余儀なくされた場合に発生する損害のことです。
主に治療費や通院交通費、手術費や付添看護費などがあります。
消極損害
消極損害とは、交通事故が原因で、本来得られるはずであった収入や利益が減少した場合に発生する損害のことです。
消極損害は「休業損害」と「逸失利益」に分けることができます。
- 休業損害
- 逸失利益
交通事故によって仕事を休んだことにより、収入が減少した場合の減収分を補償。
交通事故の怪我が後遺障害になってしまったことで労働能力が低下し、以前より収入が減少した場合の、減収分を補償。
慰謝料
交通事故で怪我を負うと、入通院を面倒だと感じたり、怪我の痛みに耐えたりしなければいけません。
交通事故によって被害者が受けた精神的苦痛は、慰謝料というかたちで加害者から支払われます。
請求できる慰謝料は2種類
損害賠償の内容について、お分かりいただけたでしょうか。今回は、損害賠償の1つである「慰謝料」について、詳しく解説していきます。
被害者が慰謝料の支払いを受けられるのは、人身事故で処理をした場合のみです。物損事故では慰謝料を請求することができないため、物損事故扱いにしている場合は人身事故への切り替えを行いましょう。
▶︎参考:物損事故から人身事故へ切り替える方法について、詳しく知りたい方はこちら!
被害者が請求できる慰謝料は、2種類。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
それぞれの慰謝料について、詳しく解説していきます。
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、交通事故による怪我の治療で入通院をする際、被害者が負った精神的苦痛を金銭で補ったものです。
被害者に支払われる慰謝料の金額は、入院の有無や通院期間によって異なります。
後遺障害慰謝料
交通事故による怪我は、必ずしも完治するとは限りません。一定期間治療を続けても症状が緩和されない場合、その怪我は症状固定(後遺症)となってしまいます。
後遺症になると、治療費や慰謝料の支払いは打ち切られてしまいます。しかし、後遺症が後遺障害と認められ、さらに後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料の支払いを受けることができます。
▶︎参考:後遺症になってから後遺障害慰謝料を受け取るまでの流れについて、詳しく知りたい方はこちら!
後遺障害慰謝料は、後遺障害になってしまったことで被害者が受けた精神的苦痛を、金銭で補ったものです。後遺障害慰謝料の詳しい金額については後述しますが、1級から14級まである後遺障害等級によって異なります。
慰謝料には3つの計算基準がある
慰謝料の計算は、3つの基準を元に行われています。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
それぞれの基準について、詳しく見ていきましょう。
自賠責基準
自賠責基準は、自賠責保険の内容を基準としています。
自賠責保険とは、自動車を所有する全ての運転者に、加入が義務付けられている強制保険です。人身事故のみに適用され、120万円を限度額として、通院1日につき4,200円の慰謝料が発生します。
自賠責保険の目的は、交通事故によって損害を受けた被害者に対して、最低限の保障を行うことです。したがって、自賠責基準による慰謝料の金額は、3つの基準の中で最も低くなります。
任意保険基準
任意保険とは、運転者の任意で加入を決めることができる保険です。慰謝料の金額が自賠責保険の限度額を超えた場合、不足分は任意保険によって補われます。
任意保険基準は、各任意保険会社によって基準が異なるため、ほとんど公表されていません。任意保険基準による慰謝料の金額は一般的に、自賠責基準よりも高く、弁護士基準よりは低くなるといわれています。
弁護士基準
弁護士基準とは、交通事故における過去の判例を参考に、弁護士会が公表しているものです。弁護士基準による慰謝料の金額は、「赤い本」や「青い本」と呼ばれる法律書で確認することができます。
弁護士基準で慰謝料を計算すると、3つの基準の中で最も高額になります。
慰謝料は自分で計算できる!
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級によって金額が決まっています。しかし先ほども述べた通り、入通院慰謝料は、入院の有無や通院期間などによって金額が異なります。
慰謝料を受け取ることができるタイミングは、加害者側の保険会社と示談交渉を行い、示談が成立した後です。示談交渉をスムーズに進めるためにも、慰謝料の計算方法を把握しておきましょう。
入通院慰謝料の計算方法
それでは、入通院慰謝料の計算方法をご紹介します。
まず、以下2つの計算を行います。
① 治療期間 = 入院期間 + 通院期間
② 実通院日数 = (入院期間 + 実通院日数) × 2
実通院日数とは、実際に医療機関へ足を運んだ日数のことです。
次に、①と②の計算結果を比べ、少ない方に4,200円をかけます。その金額が、被害者に支払われる入通院慰謝料の金額となります。
具体的な例を用いた計算方法
交通事故による怪我で、入院期間15日、通院期間120日、実通院日数95日の場合、どれくらいの入通院慰謝料になるのか、計算していきましょう。
① 治療期間 = 15日 + 120日 = 135日
② 実通院日数 = (15日 + 95日) × 2 = 220日
①と②の計算結果を比べると、①の方が少ないので、
135日 × 4,200円 = 56万7,000円
したがって、被害者に支払われる入通院慰謝料は56万7,000円となります。
基準別!後遺障害慰謝料の金額
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級と計算基準によって異なります。
自賠責基準と弁護士基準の等級別後遺障害慰謝料を、以下の表にまとめました。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第1級 | 1,100万円 | 2,800万円 |
第2級 | 958万円 | 2,370万円 |
第3級 | 829万円 | 1,990万円 |
第4級 | 712万円 | 1,670万円 |
第5級 | 599万円 | 1,400万円 |
第6級 | 498万円 | 1,180万円 |
第7級 | 409万円 | 1,000万円 |
第8級 | 324万円 | 830万円 |
第9級 | 245万円 | 690万円 |
第10級 | 187万円 | 550万円 |
第11級 | 135万円 | 420万円 |
第12級 | 93万円 | 290万円 |
第13級 | 57万円 | 180万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
慰謝料は弁護士基準で増額?
上記の表で分かる通り、自賠責基準と弁護士基準の慰謝料には、大きな違いがあります。
慰謝料を請求できるのならば、なるべく多くの慰謝料を受け取りたいというのが、被害者の本音ではないでしょうか。
慰謝料を増額させるには、示談交渉を弁護士に依頼し、慰謝料の計算を弁護士基準で行う方法があります。ただし、弁護士に示談交渉を依頼すると、弁護士費用が発生します。慰謝料を増額できたとしても、弁護士費用が増額分を上回ってしまった場合、期待通りの結果を得られない可能性もあります。
弁護士費用は、弁護士特約に加入していることで補うことができます。弁護士に示談交渉を依頼する際は、自身が加入している保険の内容を確認してからにしましょう。
交通事故の慰謝料についてまとめ
交通事故の被害にあったら、体に痛みや違和感がなくとも、病院を受診しましょう。怪我の治療費や慰謝料は、加害者に損害賠償として請求することができます。慰謝料の計算には3つの基準が使われており、それぞれの基準で慰謝料の金額が異なります。計算基準や計算方法をしっかりと把握し、納得のいく金額で示談をするようにしましょう。