交通事故にあったとき、「軽い怪我だし、物損の届出でもいいんじゃないか。」と思う方もいるかもしれません。しかし、軽い怪我だったとしても、人身の届出を出すべきです。
なぜならば、人身と物損では、被害者が得られる損害賠償に大きな差があるからです。そこで今回は、交通事故の届出について解説していきます。
交通事故にあったら必ず警察に届出を!
交通事故にあった場合、被害者は以下のことを行います。
- 警察に交通事故の届出を出す
- 加害者と連絡先を交換する
- 加害者側の保険会社に連絡を入れる
特に、上記3つのうち、警察への届出は必ず行わなくてはなりません。その理由は、警察への届出が、道路交通法によって定められた義務だからです。
もしも警察への届出を怠った場合、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金を科せられます。また、交通事故証明書も取得できなくなるため、加害者に損害賠償を請求できなくなってしまいます。
▶︎参考:交通事故の被害者がすべきことについて詳しく知りたい方はこちら
どんな交通事故のときに人身の届出すべき?
交通事故で出す届出には、「人身」または「物損」の2種類あります。
人身の場合、交通事故で怪我人がいる事故のことをいいます。一方、物損の場合、怪我人はいないがモノが壊れてしまった事故のことをいいます。このように、人身と物損のどちらの届出を出すべきかは、「怪我人がいるか・いないか」で判断することになります。
では、交通事故で軽傷を負った場合も、怪我人として判断してもよいのでしょうか。怪我人といわれると、骨折や脳挫傷など重傷を負った人のイメージがありますよね。しかし、軽い打撲やむちうちになった場合でも、人身の届出を出すことができます。
軽い怪我だからといって、人身の届出を出さなかった場合、被害者にとって不利益を被る可能性があります。
人身と物損で賠償金が異なる
人身と物損のどちらの届出を出したかによって、被害者が受け取れる賠償金の金額が異なります。
人身の届出を出した場合、大きく分けて以下の3つの賠償金を受け取ることができます。
- 積極損害
交通事故が原因で、被害者が支払った費用に対する損害のこと。
(例:治療費、器具や装具などの購入費、診察代、通院交通費など) - 消極損害
交通事故が原因で、被害者の収入や利益が減少したことに対する損害のこと。
(例:休業損害、逸失利益など) - 慰謝料
交通事故が原因で、被害者が負った精神的苦痛の対価として支払われるもの。
(例:入通院慰謝料、後遺障害慰謝料など)
一方、物損の届出を出した場合は、交通事故で壊れてしまったモノに対する賠償しか受け取ることができません。物損の場合、怪我人がいない事故なので、傷害に対する損害を加害者が賠償する必要はないと判断されるのです。
そのため、物損のままで交通事故の治療を受けた場合、被害者は治療費を自費で支払わなければならないので注意が必要です。
人身の届出を出したくない加害者もいる
被害者が人身の届出を出したいと考えていても、加害者がそれに応じてくれない場合もあります。
加害者が人身の届出を出したくない理由としては、以下のことが挙げられます。
- 加害者は行政処分や刑事処分に問われない。
- 示談交渉がすぐに終わる。
- 被害者に対して高額な損害賠償を支払わなくて済む。 など
このように、物損のままだと、加害者には多くのメリットがあるのです。
物損から人身への切り替えは可能
一度、物損の届出を出した場合でも、人身へ切り替えることは可能です。ただし、交通事故から10日以内に行わなければなりません。
事故日から時間が経っていると、ため、人身への切り替えが認められないことがあります。したがって、物損から人身への切り替えは、早めに行うことをおすすめします。
物損から人身への切り替え方法
物損から人身へ切り替える場合は、以下の手順で行います。
- 病院で診断書を取得する
- 事前に警察署に連絡を入れる
- 管轄警察署の交通捜査係に届出をし、手続きをする
人身への切り替えを行う場合、事故現場で実況見分をやり直すことになります。したがって、警察へ直接行くのではなく、事前に連絡を入れ、人身に切り替えたい旨を伝える必要があります。事前に連絡を入れれば、人身の切り替え手続きもスムーズにいきます。
ただし、場合によっては、人身への切り替えが認められないこともあります。その場合は、「人身事故証明書入手不能理由書」を提出するようにしてください。
▶︎参考:人身事故証明書入手不能理由書について詳しく知りたい方はこちら
交通事故後の届出についてのまとめ
いかがでしたか。交通事故後に出す届出は、人身と物損の2種類あります。人身か物損のどちらの届出を出すべきかは、「怪我人がいるか・いないか」で判断しましょう。
人身と物損では、被害者が受け取れる賠償金に大きな差があるため、届出は慎重に考えて提出することをおすすめします。