交通事故で裁判になってしまった場合、「遅延損害金」というものを受け取ることができます。「遅延損害金ってなんだ?」「遅延損害金は、なんで裁判になったときにしか請求できないの?」といった疑問をお持ちの方に読んでいただきたい記事です。
今回は、遅延損害金の概要や計算方法などについて解説していきます。
交通事故の被害者が受け取れる遅延損害金とは?
遅延損害金とは、金銭を支払うべきなのに、支払いが滞っているといった場合に発生する損害賠償のことです。しかし、交通事故の被害者の誰もが遅延損害金を受けとれるというわけではありません。では、どのようなときに遅延損害金が請求できるのでしょうか。
裁判を起こさないと遅延損害金は請求できない?
遅延損害金は裁判にならなければ、交通事故の被害者に支払われることはありません。そもそもお金は、手元になければ利益を得ることができなくなってしまいます。そのため、お金が手元にあれば、逃すことのなかった利益を得る機会を遅延損害金で補っているのです。
したがって、裁判になった場合、お金が手元に渡るまでに時間がかかってしまったと判断されるため、被害者は加害者に遅延損害金を請求することができるのです。
しかし、裁判を起こした場合でも、加害者と和解したときには、基本的に遅延損害金を請求することができないので注意が必要です。
遅延損害金の計算方法
遅延損害金は計算することができます。遅延損害金は、交通事故が発生した日から年5%(※1)の割合で発生します。後遺症が残った場合は症状固定日からではなく、先程と同じ要領で、交通事故が発生した日から計算することになります。
※1 民法改正により、2020年をめどに利率が年3%に引き下げられます。
遅延損害金の計算式は、以下の通り。
- 遅延損害金=損害賠償金の総額 × 0.05 × 交通事故から経過した日数 ÷ 365日
では、上記の計算式を使って実際に遅延損害金を計算してみましょう。
事例1
事例1では、以下の被害者を仮定して計算していきます。
- 損害賠償金の総額:800万円
- 交通事故から経過した日数:547日(=約1年半)
実際に計算すると…
800万円 × 0.05% × 547日 ÷ 365日 = 59万9,452円
遅延損害金は、59万9,452円ということになります。
したがって、事例1の被害者が受け取れる損害賠償の総額は、859万9,452円です。
事例2
事例2では、以下の被害者を仮定して計算していきます。
- 損害賠償金の総額:2590万円
- 交通事故から経過した日数:730日(=2年)
実際に計算すると…
2590万円 × 0.05% × 730日 ÷ 365日 = 250万円
遅延損害金は、250万円ということになります。
したがって、事例2の被害者が受け取れる損害賠償の総額は、2840万円です。
交通事故の遅延損害金はいつ支払われる?
遅延損害金は、治療費や慰謝料などの損害賠償に含まれるため、裁判が終わってから支払われることになります。
損害賠償の場合は、民事裁判で行われるため、以下のような流れで進みます。
- ①裁判所に訴状を提出する
- ②最初の口頭弁論を行う日を決める
- ③争点の整理や証拠の提出を行う(月1回の頻度で開かれる)
- ④尋問を行う
- ⑤判決を言い渡す
上記の流れで進み、事案によって民事裁判が終了する日は異なります。民事裁判が終了するまでの期間の目安としては、半年~1年だといわれています。しかし、民事裁判の判決に納得がいかないとして、控訴されることもあります。控訴された場合、2年以上かかる可能性があります。
したがって、遅延損害金が支払われるのは、民事裁判が始まってから半年~1年以上後ということになります。また、民事裁判が始まる以前の交通事故発生日を含めると、遅延損害金の受け取りはさらに遅くなってしまいます。
▶︎参考:民事裁判について詳しく知りたい方はこちら
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交通事故の遅延損害金についてのまとめ
いかがでしたか。遅延損害金とは、金銭を支払うべきなのに、支払いが滞っているといった場合に発生するもので、損害賠償の1つです。裁判になった場合に限り、加害者から被害者に対して支払われます。
ただし、裁判になっても被害者と加害者が和解した場合には、基本的に遅延損害金は支払われないということを覚えておきましょう。