交通事故の加害者自身も怪我を負うケースはたくさんあります。このように自損事故や加害者も怪我を負った場合、加害者の方は人身傷害保険を使うことで、保険金の支払いを受けることができます。
今回は、加害者の治療に対して使える人身傷害保険について、詳しく述べていきます。
人身傷害保険とは
自動車保険には、自賠責保険と任意保険があります。
- 自賠責保険:すべての運転者に加入を義務付けられている保険
- 任意保険:名前の通り、運転者の任意で加入を決めることができる保険
人身傷害保険は、任意保険の中のひとつです。相手のいない自損事故や、自身の過失割合に関係なく、被保険者(保険の対象者)が交通事故により怪我を負った場合に、保険会社から損害分を補償してもらえます。
また、相手方との示談に時間がかかる場合は、示談終了前に保険金を受け取ることができる場合もあります。
人身傷害保険の適用範囲
人身傷害保険は、交通事故で怪我を負った場合の治療費や通院交通費、休業した場合の収入分、慰謝料の補償をします。
また、被保険者のみではなく、被保険者の家族が交通事故にあった場合も、人身傷害保険を使うことができます。しかし、各任意保険によって適用範囲が異なるので、自身が加入している保険会社に確認をする必要があります。
人身傷害保険で支払われるもの
人身傷害保険では、以下の2つに対して支払いを受けることができます。
- 傷害による支払い
- 後遺障害による支払い
それぞれの内容を、詳しく説明していきます。
傷害による支払い
交通事故で怪我を負った場合、人身傷害保険を使って保険金の支払いを受けることができます。
傷害によって支払われる保険金は、3つ。
- 積極損害:交通事故にあったことによって、出費を余儀なくされた場合にかかった費用。
(例)怪我の治療費や入通院費、通院交通費など - 消極損害:交通事故が原因で仕事を休んだときの所得の減少分を補うためのもの。
(例)休業損害 - 慰謝料:交通事故にあったことで受けた精神的苦痛をお金で補ったもの。
後遺障害による支払い
交通事故の怪我は、後遺障害になってしまう場合があります。
後遺障害になった場合に人身傷害保険から支払われる保険金は、3つ。
- 後遺障害慰謝料:「後遺障害になってしまった」という精神的苦痛をお金で補ったもので、1級から14級までの等級によって支払われる金額が変動する。
- 逸失利益:交通事故の後遺障害によって労働能力が減少したことで、減少してしまった所得を補償するもの。
- 将来の介護費:後遺障害によって介護が必要になった場合、人身傷害保険によって介護料や諸雑費が補償されるもの。
人身障害保険の保険金を算定する基準3つ
上記のような保険金を算定するときに、3つの基準を使用します。
どの基準を使用するかによって、保険金の金額が異なります。
自賠責保険基準
自賠責保険基準は、自賠責保険を使用するときの算定基準です。
自賠責保険の目的は、交通事故の被害者を救済するために最低限度の補償をするというものです。そのため、自賠責保険基準で損害賠償を計算すると、3つの基準の中で最も低い金額になります。
任意保険基準
任意保険基準は、各任意保険が損害賠償を計算する場合に使用する基準です。
各任意保険で損害賠償の算定基準が異なるため、損害賠償の金額にバラつきが出てしまいます。
弁護士基準
弁護士基準とは、弁護士に損害賠償の計算を頼んだときに使用する基準です。弁護士基準で損害賠償を計算すると、3つの支払い基準の中で最も高い金額になります。
弁護士基準を使用する場合は、弁護士費用というものがかかります。しかし、自身で加入している保険に弁護士特約がついていれば、弁護士費用の一部を保険会社が負担してくれます。一度、保険会社に確認してみるのがよいでしょう。
人身傷害保険に加入しているか確かめるには
自分が人身傷害保険に加入しているか分からなくなった場合は、保険証券という書面で確認することができます。
保険証券とは、保険契約の成立や内容を明確にするために、保険会社が発行する証券です。
保険内容の内容が詳しく書かれている、保険約款という書面も、合わせて確認するとよいでしょう。
保険証券や保険約款は、契約締結時に保険会社から交付されます。
人身傷害保険についてのまとめ
交通事故で加害者になってしまったら、被害者に対して慰謝料を支払わなければいけません。しかし、加害者自身も怪我を負ってしまった場合、自分の治療費や通院交通費はどうなるのか、気になりますよね。
交通事故の加害者でも、人身傷害保険を使うことで治療費や通院交通費などの保険金を受け取ることができます。交通事故直後は、気が動転してしまうかと思いますが、自身が加入している保険内容をしっかりと確認することが大切です。