交通事故にあったときには、保険会社から慰謝料を受け取ることができます。その際には手続きを済ませなければなりません。また、自賠責保険と任意保険で手続き内容は異なります。
もくじ
交通事故で使う一般的な保険2つ
交通事故にあったときに保険を使うことで、治療費や通院交通費などの自己負担を少なくすることができます。交通事故の被害者の多くは、「自賠責保険」か「任意保険」を使うことが多いです。ここでは、この2つの保険について説明していきます。
1.自賠責保険
自賠責保険は、国土交通省が管轄しており、個人で加入する保険です。具体的な内容については、特徴とともに説明していきます。
自賠責保険の特徴は、以下の2つ。
- ①強制加入が義務
- ②人身事故のみが対象
①強制加入が義務
自賠責保険は自動車を持っている人なら、強制的に加入しなければならない保険です。自賠責保険に加入していない場合は、運転してはいけないと自動車損害賠償保障法で決められています。また、自賠責保険に加入していないと、車検を受けることもできないので、必ず加入しましょう。
車検時に車検費用の支払いと合わせて2年分の自賠責保険料を支払う仕組みになっています。そのため、通常は自賠責保険料を支払わずに済ませることはできません。また、自賠責保険の料金は一定額です。
②人身事故のみが対象
自賠責保険は最低限の補償をするという趣旨の保険であるため、補償の対象になるのは人身事故のみです。自分自身の怪我に関しては対象外で、相手が怪我をしたり死亡したりした場合の慰謝料が支払われます。さらに、被害者1名に対し慰謝料の限度額が120万円と決められています。
2.任意保険
任意保険は、各保険会社で加入申し込みを行うことで、保険サービスを受けられます。具体的な内容については、特徴とともに説明していきます。
任意保険の特徴は、以下の4つ。
- ①加入するかどうかは自由
- ②物損事故と人身事故の両方に対応できる
- ③等級や多様なプランがある
- ④保険を使うかどうかも自由
- ⑤任意保険基準
①加入するかどうかは自由
任意保険は、自動車を運転する人が、事故に備えて加入するための保険です。加入するかしないかは自由だという点で自賠責保険と異なります。保険料も保険会社によって異なります。また、大きな事故を起こした場合、任意保険は自賠責保険でカバーできない部分を補償してくれます。そのため、ほとんどの人が任意保険にも加入していることが多いです。
加入しなくても、自動車を運転してはいけないというわけではありません。任意保険に加入せずに自動車を運転することは、極力避けた方がよいでしょう。
②物損事故と人身事故の両方に対応できる
任意保険に加入するメリットとしては、大きな事故の加害者になってしまったときの他に、物損事故に備えられるという点が挙げられます。交通事故で怪我をした場合、、車両も損傷する可能性もあります。車両の修理費は高額になってしまうことが多いですが、任意保険に加入していれば、交通事故の際に破損した箇所を修理するのに、保険金で賄うことができます。
何千万円もの損害賠償金を請求されるような大きな事故の加害者になることは非常に稀でも、ちょっと車体をぶつけて凹んでしまうくらいの小さな事故なら、一生のうち1度か2度くらいは起こしてしまうかもしれません。そのときに任意保険が役立ちます。
人身事故に関しても、慰謝料がもらえます。自賠責保険だけだと、不十分なことが多いですが、任意保険にも加入していれば自賠責保険に上乗せして補償を受けることができるのです。
③等級や多様なプランがある
任意保険には等級やプランが設けられています。手厚い補償を求める場合には、保険料が高めのプランを選びます。自動車の使用目的などによっても、プラン分けされているのが任意保険の特徴です。通勤用に自動車を使っている人と、レジャーなどで使っている人は別プランになります。
そして、任意保険には20段階のノンフリート等級(※)があります。交通事故を起こさなければ等級が上がり、交通事故を起こすと下がる仕組みです。交通事故を起こさなければ、同じプランでも保険料が安くなります。したがって、交通事故を起こす可能性の低い人は、保険料の負担が軽くなります。
※ノンフリート等級について
任意保険の契約者が所有・使用する車の契約台数が、他の保険会社での契約台数を含めて 9台以下の場合をノンフリート契約といいます。
そのノンフリート契約の契約に使用する無事故割引(割増)の等級をノンフリート等級というのです。
先程も述べたように、ノンフリート等級は1等級から20等級で表され、等級が高いほど、割引率も高くなります。契約期間中の事故の有無、形態により、次年度のノンフリート等級が決定されます。
④保険を使うかどうかも自由
保険を使うと、ノンフリート等級が下がってしまいます。しかし、交通事故を起こした場合に、必ずしも保険を使わなければならないというわけではありません。軽い物損事故で修理費用もそれほど高くならないようであれば、保険を使わずに自費で修理するというやり方もあります。
大きな物損事故や人身事故で入院や通院が必要なときにだけ保険を使うという人も少なくありません。ただし、保険を使うつもりがなくても、交通事故を起こしたら警察への連絡は済ませておく必要があります。
⑤任意保険基準
入通院慰謝料の場合、実通院日数と通院期間も考慮し決めていきます。しかし、任意保険基準は、各任意保険会社で異なるため、慰謝料の金額にも差が出てきます。また、自賠責基準よりは高い基準なのですが、基本的に非公開となっています。そのため、妥当な慰謝料であるかの判断が難しいです。
交通事故で通院したら受け取れる損害賠償
交通事故で通院した場合に受け取れる損害賠償は、以下のものがあります。
通院や入院の際に必要な費用
通院や入院することになったとき、治療費や診察費などの費用がかかると思います。それらの費用は、加害者の保険会社に請求することができます。これによって、交通事故の被害者は、金銭面の負担を少なくすることができます。
どんな費用が請求できるのか
- 治療費
- 通院交通費
- 診察費
- 付添看護費
- 器具の購入費 など
入通院慰謝料
入通院慰謝料は、入通院したことで負った精神的苦痛の対価として受け取るものです。
交通事故で損害賠償を請求する方法
交通事故で損賠賠償を請求する方法は、以下の2つから選ぶことができます。
①被害者請求
加害者側から賠償が受けれれないとき、加害者側の保険会社に慰謝料を直接請求するという方法です。
②加害者請求
加害者がまず被害者に慰謝料を支払った後で、保険金を加入している保険会社に請求するという方法です。
交通事故の損害賠償を受け取るまでの流れ
交通事故にあい、入通院慰謝料を請求することになったとします。「どうやって請求するのだろう」と悩みを抱えている方もいるでしょう。ここでは、入通院慰謝料や通院費を受け取るまでの流れについて説明していきます。
入通院慰謝料や通院費を受け取るまでの流れは、以下の通り。
- 交通事故証明書が必要
- 実況見分後に保険会社にすぐ連絡する
- 必要書類を揃えて保険会社に請求をする
- 示談交渉が終わってから慰謝料が支払われる
交通事故証明書が必要
交通事故を起こしてしまったら、警察に連絡をして実況見分が行われます。そして、警察から交通事故証明書を発行してもらうことができます。この交通事故証明書は、任意保険で慰謝料を請求する手続きの際に必要になる書類です。交通事故証明書がないと、任意保険はもちろんのこと自賠責保険の慰謝料も請求できません。
実況見分後に保険会社にすぐ連絡する
慰謝料請求の手続きとしては、まず保険会社に連絡をして交通事故を起こしてしまった旨を伝えます。警察の実況見分が終わったらすぐに連絡をするのが望ましいです。次の日になってからでも大丈夫ですが、なるべく当日のうちに済ませておきましょう。
保険会社への連絡が遅れると、交通事故の相手への連絡も遅れることになり、示談交渉が上手く行きにくくなってしまいます。ほとんどの保険会社では交通事故の連絡を24時間受け付けているため、深夜に交通事故を起こしてしまった場合でもすぐに連絡可能なので、ご安心を。
必要書類を揃えて保険会社に請求をする
示談交渉が終わって保険会社に連絡をすると、慰謝料の請求用紙が送られてきます。保険会社ごとに異なる様式です。その用紙に必要事項を記載して、保険会社に返送するという手順です。
必要書類について
- 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払い請求書
- 交通事故証明(人身事故)
- 事故発生状況報告書
- 医師の診断書
- 診断報酬証明書
- 通院交通費明細書
- 印鑑証明書
※会社を休んだ場合は「休業損害証明証」を提出、被害者が未成年である場合は、住民票か戸籍抄本を親権者が区役所に取りに行く必要があります。
示談交渉が終わってから慰謝料が支払われる
交通事故が原因の怪我で通院をした場合には、通院の日数に応じて慰謝料が支払われます。そのため、基本的に治療が終わり通院の必要性がなくなってから、示談交渉を行うことになります。交通事故にあってすぐに支払われるわけではないという点に注意しましょう。
後遺症が残る場合には、後遺障害等級認定の申請を行います。後遺障害の等級に該当した場合、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。
交通事故で通院したときについてのまとめ
交通事故にあってしまったら、警察だけでなく保険会社にもすぐに連絡をしましょう。交通事故の怪我を治療するために通院をした場合、加害者側の保険会社に治療費や慰謝料を請求することができます。治療費や慰謝料を請求するためには、書類が必要です。前もって準備しておくようにしましょう。