交通事故でケガをしてしまった時にかかる費用は、治療費だけではありません。通院するためには交通費がかかります。さらに、通院期間が延びれば、その分交通費がかさんでしまいます。
「交通費は保険会社から支払われるの?」
「いつ・どうやって払ってもらえるの?」
といった疑問にお答えします。
事故の怪我で通院したら交通費は支払われる?
交通事故の被害にあうと、治療・施術を受けるために定期的な通院が必要ですよね。
自賠責保険が適用されている場合、治療・施術にかかった費用を請求できるのは、みなさまご存知の通り。
しかし、その怪我の治療の際にかかった交通費は、加害者に負担してもらえるのでしょうか。
通院にかかった交通費は、基本的に請求できる
交通事故で怪我を負い、怪我の治療をする際にかかった交通費は、加害者に対して請求することができます。
それでは、通院にかかる交通費を5つに分類し、それぞれについて詳しく説明していきます。
①電車・バス
電車・バスなどの公共交通機関を利用した場合の交通費は、請求することができます。交通費の計算方法は、自宅から通院先までの「往復交通費✕通院日数」です。
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例:自宅から通院先までバスを利用し、合計60日通院した場合
「自宅から通院先までの往復バス代×60」
という計算になります。
②自家用車
自家用車で通院した場合は、ガソリン代が支払われます。ガソリン代を計算する場合は、1kmあたり15円と決められています。
③付添者の交通費
被害者の通院や子供が通学する際に付添看護が必要な場合、近親者の交通費も損害として認められます。
しかし、付添者の交通費が認められるかどうかは、保険会社がその妥当性を判断して決めます。一度、保険会社に問い合わせるのがよいでしょう。
④通勤代
普段の通勤手段ではない、他の通勤方法や通勤経路で通勤した場合は、普段の通勤代との差額分を請求することができます。しかし、認められるかどうかは、その相当性や必要性で判断されます。
- ~具体例~
例1:いつもの通勤では車やバイクを使っていたが、事故のケガでバスや電車などを利用した。
例2:足の骨折により、普段のような満員電車に乗っての通勤が難しくなったため、タクシーを利用して通勤した。
⑤タクシー
問題になりがちなのが、タクシーを使った場合です。通院の際にタクシーを使うときは、事前に必ず保険会社に連絡してください。「公共交通機関が整っていない」、「骨折していて歩けないので移動はタクシーでなければいけない」など、明確な理由がある場合は、支払いに応じてもらえることがあります。
物損事故でも交通費は請求できる?
物損事故とは、交通事故による怪我人はあらわれず、車の破損や公共物などのモノのみに損害が発生する事故です。
怪我人があらわれないということは、被害者が医療機関へ通院する必要もないため、通院交通費が発生することはありません。
ただし、物損事故であっても、交通費を請求する必要性・相当性が認められた場合、交通費の請求が可能になることもあります。
交通費を請求する必要性・相当性の例
通勤に使っていた自家用車が物損事故で破損したことによって、他の交通機関を使用しなければいけなくなった場合、普段かかっている交通費と交通機関を使用した場合の交通費の差額分を請求することができます。
事故の被害者が交通費以外で請求できる損害賠償
交通費以外の損害賠償には、どんなものがあるのでしょうか。そもそも損害賠償とは、交通事故の被害者が負った損害を金銭で補うためのものです。
被害者が請求できる費用は、損害賠償の中に含まれます。損害賠償は、以下のような3つに分類することができます。
- ①積極損害
- ②消極損害
- ③慰謝料
①積極損害
積極損害とは、交通事故にあったことで、被害者が出費しなければいけなくなった場合に発生する損害です。
例:治療費、入院雑費、通院交通費、装具・器具などの購入費など
②消極損害
消極損害とは、交通事故にあわなければ、被害者が将来得るはずだった利益の損害のことをいいます。
消極損害は、「休業損害」と「逸失利益」の2つに分けられています。
休業損害とは
交通事故にあい、通院を余儀なくされたことで、仕事を休まなくてはならないことがあります。専業主婦の方でも家事ができなくなり、ヘルパーさんをお願いしないといけない事態になることがありますよね。
その場合は休業損害といって、交通事故が原因で休まざるをえなかった仕事について、補償を受けることができます。被害者が事故に遭う直前の3ヶ月分の給料を、90で割ったものに休んだ日数をかけた金額が休業損害補償です。また、専業主婦の場合は、日額あたり5700円が最低ラインという決まりがあります。
そもそも、特約としてベビーシッター代や、介護ヘルパー、ホームヘルパー代などが補償されるという保険契約も存在しますので、保険会社に確認してみましょう。いずれにしても、保険会社に請求しない限り支払ってもらえません。交通事故によって受けた損害は、キチンと請求するようにしましょう。
逸失利益とは
後遺障害が残ってしまった場合、その影響により仕事自体が困難になってしまうことがあります。この場合、後遺障害でなければ得られたはずの収入や利益を、保険会社に請求できます。
③慰謝料
交通事故にあったことによる精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことをいいます。
例:入通院慰謝料、後遺障害慰謝料
入通院慰謝料とは
交通事故にあい、入通院することに対する精神的苦痛の対価として請求します。
慰謝料を計算する場合、3つの基準というものが存在します。それは、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準です。どの基準を使って計算をするかによって支払われる金額に差が出ます。
自賠責保険基準では、支払われる慰謝料が1日あたり4200円と決められています。
自賠責保険基準による入通院慰謝料の計算方法は、以下の通りです。
後遺障害慰謝料とは
後遺症が残ってしまい、後遺障害の等級に該当した場合は、後遺障害慰謝料を請求できます。後遺障害には等級があり、障害の等級に応じて1〜14級までの14段階に分かれます。等級に応じた受け取れる金額が異なります。
しかし、後遺障害等級認定は申請したとしても、後遺障害の等級が認められるのは難しいです。したがって、専門家の知識を持った先生に相談するのがよいでしょう。
交通費を含む事故の損害賠償を請求する方法
通院の際にかかる費用の支払いについては、どこまで請求できるのか、あらかじめ保険会社に確認をとっておくのがよいでしょう。
保険会社に請求する際は、「通院交通費明細書」という書類に、いつ、どこへ行くのに、いくらかかったかを記入します。病院への通院、通勤先に行くときの通常ルートとの差額分、付き添いの人の交通費なども記入します。
通院交通費明細書の書き方は特に難しいものではないので、正確に書くことを心がけましょう。通院交通費明細書を保険会社に提出するときには、領収書も必要です。したがって、領収書は捨てずにとっておいてください。
領収書のないバスや電車といった公共交通機関の場合は、メモ書きで構いません。どのバス停から乗って、どこで降りたのか、いくらかかったのかなどわかりやすくメモしておいてください。
治療費だけでなく、通院交通費も忘れずに請求
いかがでしたか?今回は、通院する際にかかる交通費についてご説明しました。
保険会社から支払ってもらえるものは、慰謝料だけではありません。そのほかの損害についても、被害者側から請求すれば支払ってもらえます。
ただし、被害者側から請求がないと支払ってもらえないということを覚えておいてください。通院と普段の生活を両立させることは大変だと思いますが、忘れずに通院交通費を請求しましょう。