交通事故に関する相談は、「交通事故に詳しい人」に相談したいと思いますよね。そんなとき、日弁連交通事故相談センターを利用することをおすすめします。
しかし、日弁連交通事故相談センターがどのような機関なのか、わからない方も多いと思います。そこで今回は、日弁連交通事故相談センターについて詳しく解説していきます。
もくじ
日弁連交通事故相談センターはどんな組織?
「日弁連交通事故相談センター」とは、日弁連(=日本弁護士連合会)が基本的人権の擁護と社会正義の実現を図るため、昭和42年に設立した公益財団法人です。また、日弁連交通事故相談センターは、弁護士が運営しており、誰でも無料で利用することができます。
運営の目的は…
自動車事故に関する損害賠償問題を適正かつ迅速に処理できるように促すこと。
公共の福祉の増進に貢献すること。
無料で利用できる理由
日弁連交通事故相談センターは、国(国土交通省)からの補助金、日弁連・弁護士会・弁護士・関係団体や多くの方の寄付金などで運営されているからです。
弁護士事務所との違いは?
弁護士事務所でも、交通事故の相談をすることは可能です。「だったら、弁護士事務所に相談すればいいのでは…?」そう思いますよね。日弁連交通事故相談センターと弁護士事務所には、どのような違いがあるのでしょうか。
大きな違いは
- 弁護士事務所の弁護士:「依頼者の味方」
- 日弁連交通事故相談センターの弁護士:「中立な立場」
という点です。
日弁連交通事故相談センターでできること①
日弁連交通事故相談センターではできることの1つ目は、「交通事故に関する相談」です。
日弁連交通事故相談センターでは、以下のような相談を受けつけています。
- 損害賠償額の算定
- 賠償責任の有無、過失の割合
- 賠償責任者の認定
- 損害の請求方法
- 保険に関する問題、政府保障事業の問題
- その他交通事故の民事上の法律問題
上記を交通事故相談センターで相談する方法は、「面接での相談」または「電話での相談」から選択できます。
面接での相談
実際に相談所へ行き、相談者と弁護士が面接の形式で行うのが基本的な方法です。相談時間は30分程度となっています。相談時間が電話での相談よりも長いので、具体的な質問を行うことができます。
面接での相談をするには、事前予約が必要ですので、必ず電話で予約をとって相談所へ行ってください。
電話での相談
専用の電話番号に電話をして、相談担当の弁護士とお話しをするという方法です。相談時間は10分と決められています。そのため、事故や被害の状況などを詳しく伺うことができません。電話での相談は、軽めの質問をする場合に使うのがよいでしょう。
また、毎月10日は拡大電話相談日となっています。この日受付時間が長く、対応してくれる相談員も多いので、電話が繋がりやすくなっています。
相談時にあるとよい書類とは?
相談時間内で充分な回答を得るには、交通事故に関する書類があると相談がスムーズに進めることができます。
その書類とは…
- 交通事故証明書、事故状況を示す図面(道路状況、事故の場所、日時、天候など)、現場・物損などの写真
- 診断書、後遺障害診断書
- 治療費明細書(入通院日数、治療費、通院費のメモなど)
- 交通事故前の収入を証明するもの(給料明細書、休業損害証明書、源泉徴収票・確定申告書の写しなど)
- 相手方からの提出書類や、示談交渉をしていれば、その過程
- 加害者の任意保険(※加入している場合)と種類
- その他(差額ベット代、付添日数・費用、修理費、家屋改修費、有給休暇日数、相手方加入保険内容のメモ)など
相談を断られることも…
以下の場合、日弁連交通事故相談センターが電話での相談をお断りしています。
- 弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱等の禁止)違反の疑いのある者からが申し込んだ場合
- 相談者がすでに弁護士である代理人を選任しているとき
- 相談回数が原則として同一事案につき5回(相談所によっては3回まで)を超えるとき
- 事故当事者本人以外の者からの申込みであるとき
※ ただし、同居の親族、四親等内の親族及びこれらに準ずる者からの申込みである場合を除く - その他相談を行うのに適当でないとき
日弁連交通事故相談センターでできること②
日弁連交通事故相談センターでできることの2つ目は、「示談あっせん」です。示談あっせんでは、日弁連交通事故相談センターの弁護士が、中立・公正な立場から間に入って示談をまとめる手伝いをしてくれます。
日弁連交通事故相談センターにおいて、示談あっせんが「可能なもの」と「不可能なもの」があります。
示談あっせんが可能なもの
日弁連交通事故相談センターで示談あっせんが可能なものは、自賠責保険または自賠責共済に加入している車両の「自動車」事故の案件のみです。
例えば、以下のような事故のことです。
- 人身事故
- 人身障害を伴う、物損事故
- 物損事故のみ
(※加害者が物損事故の示談代行付きの任意保険または任意共済のいずれかに加入している場合)
示談あっせんが不可能なもの
以下に該当する場合、日弁連交通事故相談センターでは、示談あっせんが受けられません。
- 調停または訴訟手続に係属中であるとき
- 他の機関にあっせんを申し出ている事案であるとき
- 不当な目的により申出をしたものと認められるとき
- 当事者が権利または権限を有しないと認められるとき
- >弁護士法第72条(非弁護士の法律事務の取扱等の禁止)違反の疑いがある者からの申出であるとき
- その他示談あっせんを行うのに適当でないと認められるとき
示談のあっせんが不成立になったら?
示談のあっせんが不成立になった場合の解決方法は、「調停」や「訴訟」になります。しかし、日弁連交通事故相談センターが行った、下記の共済の示談あっせんが不成立となった事案のうち、以下のものについて「審査」を行うことができます。
- 下記の共済(※)が当事者の一方(被共済者)の代行をしているもので、被害者から審査の申出があったとき。
- 被共済者(加害者)から審査の申出があったものにつき、被害者がその申出に同意したとき。
審査とは
専門家によって構成される審査委員会(審査員3名)が審査を行って判断を行います。審査結果について被害者側が同意するかどうかは自由です。しかし、被害者が審査結果に同意したときは、加害者側の共済は審査意見(評決)を尊重することになっています。この場合は、その審査意見に沿った示談成立書が作成されます。
また、被害者が同意しない場合は、紛争の解決は「調停」や「訴訟」に委ねられることになります。このように、示談が不成立になった場合でも、加害者が下記の共済(※)に加入している場合は、「審査の申し出」という紛争解決手段を利用できます。したがって、加害者がどんな共済に加入しているのかを確認してみましょう。
(※)審査の申し出が可能となる9共済
- 全労済(全国労働者共済生活協同組合連合会)の「マイカー共済」に加入。
- 教職員共済生協(教職員共済生活協同組合)の「自動車共済」に加入。
- JA(農業協同組合)の「自動車共済」に加入。
- 自治協会(全国自治協会)・町村生協(全国町村職員生活協同組合)の「自動車共済」に加入。
- 都市生協(生活協同組合全国都市職員災害共済会)の「自動車共済」に加入。
- 市有物件共済会(全国市有物件災害共済会)の「自動車共済」に加入。
- 自治労共済生協(全日本自治体労働者共済生活協同組合)の「自動車共済」に加入。
- 交協連(全国トラック交通共済協同組合連合会)の「自動車共済」に加入。
- 全自共(全国自動車共済協同組合連合会)の「自動車共済」、全自共と共済連(全国中小企業共済協同組合連合会)の「自動車共済(共同元受)」に加入。
日弁連交通事故相談センターを利用するメリット
日弁連交通事故相談センターを利用する前に、自分にとってメリットが大きいのか検討したいですよね。以下に、日弁連交通事故相談センターのメリットについて、まとめてみました。
- 相談所が全国にあるので、気軽に相談しに行くことができる。
- 日弁連交通事故相談センターへの相談と示談あっせんの費用が、無料であること。
- 通院中でも相談ができるので、治療に専念することが可能になる。
- 交通事故の民事紛争処理に詳しい弁護士が対応してくれる。
日弁連交通事故相談センターを利用するデメリット
ただし、日弁連交通事故センターを使用して、利用者がデメリットを受ける可能性もあります。以下に、日弁連交通事故相談センターのデメリットについて、まとめました。
- 加害者の自動車保険が損保会社だった場合、「審査」まで行っても強制力がなく、希望額を支払ってもらえないときもある。
- 日弁連交通事故相談センターは、「中立」な立場なので、依頼者の最大限の利益のために動くとは限らない。
- 電話相談は便利ですが、少し繋がりにくい。
日弁連交通事故相談センターの弁護士に相談!
日弁連交通事故相談センターについて理解できたでしょうか。
どこの弁護士に相談すればよいか悩んだら、日弁連交通事故相談センターの無料相談を利用してみましょう。面談での相談をする場合の相談時間は30分程度です。したがって、あらかじめ必要な書類を用意しておいて、相談をスムーズに進めれるようにしましょう。