加害者側の保険会社に提示された示談金に納得がいかないなど、交通事故の示談交渉が順調に進まない場合、被害者は交通事故紛争処理センターを利用することができます。
この記事では、
- 交通事故紛争処理センターとは
- 交通事故紛争処理センターを利用するメリットとデメリット
- 交通事故紛争処理センターを利用する際の注意点
などについて詳しく解説していきます。
もくじ
交通事故紛争処理センターとは
交通事故が起きると、被害者と加害者側の保険会社が示談交渉を行い、被害者に支払われる損害賠償金を決定します。
交通事故紛争処理センターは、示談交渉を行う際に何らかの紛争が起きた場合、被害者と加害者側の保険会社の間に立ち、紛争の解決を行っている機関です。
交通事故紛争処理センターの所在地
交通事故紛争処理センターは、全国11ヶ所に存在しています。
東京本部 | 〒163-0925 新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリスビル25階 TEL.03-3346-1756 FAX.03-3346-8714 |
札幌支部 | 〒060-0001 札幌市中央区北1条西10丁目 札幌弁護士会館4階 TEL.011-281-3241 FAX.011-261-4361 |
仙台支部 | 〒980-0811 仙台市青葉区一番町4-6-1 仙台第一生命タワービルディング11階 TEL.022-263-7231 FAX.022-268-1504 |
名古屋支部 | 〒450-0003 名古屋市中村区名駅南2-14-19 住友生命名古屋ビル24階 TEL.052-581-9491 FAX.052-581-9493 |
大阪支部 | 〒541-0041 大阪市中央区北浜2-5-23 小寺プラザビル4階南側 TEL.06-6227-0277 FAX.06-6227-9882 |
広島支部 | 〒730-0032 広島市中区立町1-20 NREG広島立町ビル5階 TEL.082-249-5421 FAX.082-245-7981 |
高松支部 | 〒760-0033 高松市丸の内2-22 香川県弁護士会館3階 TEL.087-822-5005 FAX.087-823-1972 |
さいたま相談室 | 〒330-0844 さいたま市大宮区下町1-8-1 大宮下町1丁目ビル7階 TEL.048-650-5271 FAX.048-650-5272 |
金沢相談室 | 〒920-0853 金沢市本町2-11-7 金沢フコク生命駅前ビル12階 TEL.076-234-6650 FAX.076-234-6651 |
静岡相談室 | 〒420-0851 静岡市葵区黒金町11-7 三井生命静岡駅前ビル4階 TEL.054-255-5528 FAX.054-255-5529 |
交通事故紛争処理センターが行う業務
交通事故紛争処理センターが行う業務は、以下の4つ。
- 1.弁護士の紹介
- 2.法律相談
- 3.和解あっ旋
- 4.審査手続き
一つひとつの内容を、詳しく見ていきましょう。
弁護士の紹介
交通事故においての示談交渉に慣れていない被害者のために、交通事故紛争処理センターでは相談担当弁護士の紹介を行っています。相談担当弁護士の紹介に費用がかかることはありません。担当弁護士は、被害者自身が選ぶことはできません。また、示談が終了するまで担当弁護士が変更されることもありません。
法律相談
法律相談では、相談担当弁護士が示談交渉についての相談にのってくれます。
相談は、被害者と弁護士が面談をして行うため、事前の電話予約が必要となります。2回目以降の相談日は、相談時に被害者と弁護士が打ち合わせをし、決定します。
示談の紛争解決を目的としているため、交通事故直後や治療中の相談受付は行っていません。
和解あっ旋
和解あっ旋とは、交通事故においての示談交渉で紛争が起きた際、当事者(被害者と加害者側保険会社)ではない第三者(弁護士)が仲介に入り、紛争を解決させるための制度のことをいいます。
和解あっ旋は、被害者が弁護士に対して和解あっ旋を依頼した場合や、相談を行った上で和解あっ旋が必要だと弁護士が判断した場合に行われます。
和解あっ旋の流れは、以下の通りです。
- ①交通事故紛争処理センターが加害者側保険会社に来所を要請する。
- ②相談担当弁護士が当事者から話を聞く。
- ③弁護士が、当事者の言い分を中正公立な立場でまとめ、解決方法を当事者双方に提示する。
- ④損害賠償の関係資料を整え、和解成立。
- ⑤和解あっ旋によって示談が成立した場合は、弁護士立ち会いのもと示談書または免責証書を作成する。
和解あっ旋が終了となる場合は、以下の通りです。
1.和解が成立した場合
2.相談担当弁護士が和解の成立の見込みがないと判断し、和解あっ旋が不調となった場合
3.申立人(被害者)が和解あっ旋を取下げた場合
4.保険会社等から訴訟による解決の要請(訴訟移行の要請)が出され、センターで訴訟移行の要請が承認された場合
5.予約受付前に本訴、調停に係属している等和解あっ旋を行えないことが判明した場合
6.相談担当弁護士が和解あっ旋を停止した日から6ヶ月を経過したにもかかわらず当該停止事由が解消しない場合で、相談担当弁護士が和解あっ旋を終了させた場合
7.次回期日の指定のない事案で、申立人(被害者)が再来を希望しないと認められる場合
8.申立人(被害者)等が「利用規定」に従わない場合
審査手続き
相談担当弁護士が、和解あっ旋が不調であると判断した場合、当事者双方に通知を出します。和解あっ旋不調の通知を受けた当事者双方は、個別事案の審査申し立てをすることができます。審査申し立てができる期間は、通知後14日間です。
審査の流れは、以下の通りです。
- ①審査に申し立てられた事案や関係書類、問題点、当事者双方の主張を、相談担当弁護士が審査会へ説明し、開催の予定日を決定する。
- ②審査員が、問題点や交通事故の内容について当事者双方に説明を求め、主張を聞く。
- ③審査の結果、裁定(手続きを求める手続き)が行われる。(※)
- ④申立人が裁定に同意した場合、示談書又は免責証書が作成され、保険会社から被害者へ損害賠償の支払い手続きが行われる。
(※)裁定告知を受けた申立人は、告知を受けた14日以内に、裁定に対し同意または不同意を交通事故紛争処理センターへ回答する必要があります。14日を過ぎた場合は不同意とみなされ、交通事故紛争処理センターでの手続きは終了となります。
交通事故紛争処理センターが行わない業務
交通事故において以下の紛争が起こっている場合は、交通事故紛争処理センターを利用することはできません。
1.自転車と歩行者、自転車と自転車の事故による損害賠償に関する紛争
2.搭乗者傷害保険や人身傷害補償保険など、自分が契約している保険会社又は共済組合との保険金、共済金の支払いに関する紛争
3.自賠責保険(共済)後遺障害の等級認定に関する紛争
また、以下の場合も交通事故紛争処理センターでの本手続きを行うことはできません。しかし、交通事故の加害者または加害者側の保険会社、共済組合が同意した場合は、本手続きを行う場合があります。
1.加害者が任意自動車保険(共済)契約をしていない場合
2.加害者が契約している任意自動車保険(共済)の約款に被害者の直接請求権の規定がない場合
3.加害者が契約している任意自動車共済が、JA共済連、全労済、交協連、全自共及び日火連以外である場合
交通事故紛争処理センターを利用するメリット
交通事故紛争処理センターを利用するメリットは、以下の3つ。
- 無料で利用することができる
- 示談交渉をスムーズに進めることができる
- 中正公立な機関で、迅速な処理
交通事故紛争処理センターでは、示談交渉においての法律相談や和解あっ旋、審査手続きをすべて無料で行ってくれます。被害者は、必要書類の準備費用や交通事故紛争処理センターへの交通費など、必要最低限の費用を負担するだけでよいのです。
示談交渉をスムーズに進めることができる
示談交渉の当事者のみでは示談交渉が進まない場合、相談担当弁護士へ相談することで、スムーズに示談交渉を進められる可能性が高くなります。和解あっ旋が不調な場合は、交通事故紛争処理センターで審査会が開催され、被害者に対して裁定が提案されます。
被害者が裁定案に同意すると、加害者側保険会社から被害者へ損害賠償が支払われます。不同意の場合は交通事故紛争処理センターでの手続きは終了し、被害者は訴訟を起こすことができます。
中正公立な機関で、迅速な対応
交通事故紛争処理センターへ相談すると、裁判を行うよりも紛争の早期解決を期待することができます。なぜなら、交通事故紛争処理センターでは、交通事故による紛争の早期解決を目的としているためです。また、被害者自らが弁護士に依頼することなく、弁護士基準での損害賠償を獲得できる場合があります。
交通事故紛争処理センターを利用するデメリット
交通事故紛争処理センターを利用するデメリットは、以下の3つ。
- 被害者に対して必ずしも良好な結果が得られるわけではない
- 被害者自らが交通事故紛争処理センターへ出向く必要がある
- 利用できる期間が限られている
被害者に対して必ずしも良好な結果が得られるわけではない
交通事故紛争処理センターは公正中立な立場で相談に乗り判断するため、相談担当弁護士が必ずしも被害者の味方になってくれるとは限りません。また、被害者は相談担当弁護士を被害者自身で選択することはできません。弁護士と相性が悪いと感じた場合も、別の弁護士と交代することは認められません。
被害者自らが交通事故紛争処理センターへ出向く必要がある
交通事故紛争処理センターでの法律相談や和解あっ旋を受けたい場合、被害者自身が交通事故紛争処理センターの本部・支部・相談室へ直接出向く必要があり、交通費は被害者の全額負担となります。交通事故紛争処理センターは全国11ヶ所に存在していますが、被害者の居住している付近にあるとは限りません。
また、交通事故紛争処理センターでの面談を行うために仕事を休んだ場合でも、休業補償を受けることはできません。
利用できる期間が限られている
交通事故紛争処理センターを利用できる機関は、治療終了後または後遺障害等級認定の手続きが終了してからになります。損害賠償の獲得が決定している状態でないと、交通事故紛争処理センターを利用することはできません。
遅延損害金が発生しない
遅延損害金とは、被害者に対する損害賠償金の支払いを遅延している場合に発生する賠償金のことをいいます。裁判によって損害賠償を請求する際は、交通事故発生時から損害賠償金支払い時まで、年5%の遅延損害金をつけることができます。
しかし、交通事故紛争処理センターで解決した場合は、遅延損害金をつけることができません。したがって、被害者に支払われる損害賠償金が減少してしまう可能性があります。
交通事故紛争処理センターについてまとめ
交通事故による示談交渉で紛争が起きた場合、紛争を解決するために交通事故紛争処理センターを利用することができます。交通事故紛争処理センターを利用すると、示談交渉がスムーズに進む可能性が高くなります。また、利用する際の費用はかかりません。しかし、交通事故紛争処理センターでは公正中立な立場で判断を行うため、被害者が有利な結果になるとは限りません。メリットやデメリットをしっかりと把握した上で利用するようにしましょう。