交通事故治療マガジン

人身扱いの交通事故は、物損と異なる!誤った場合は変更可能?

人身扱いの事故と物損扱いの事故では、被害者に支払われる損害賠償に大きな差があります。また、損害賠償だけでなく、加害者が受ける処分も異なるため、人身と物損のどちらで処理されたかというのは大切です。

そこで今回は、人身扱いと物損扱いの交通事故における違いについて解説していきます。

交通事故は人身と物損の2種類

交通事故にあったら、警察や保険会社へ連絡したり、実況見分などを行うことになります。このような交通事故の処理の中で、今回起こった交通事故が人身扱いなのか、物損扱いなのかという処理も行われます。

人身事故と物損事故の定義

人身事故とは、交通事故の発生後に怪我人がいる事故のことです。また、モノが壊れていても怪我人がいる場合は、人身扱いの事故となります。

一方、物損事故とは、交通事故の発生後に怪我人がおらず、モノのみが壊れている事故のことです。したがって、車の破損のみで済んだ事故、ガードレールや電柱がへこんだのみの事故などが、物損扱いの事故ということになります。

人身扱いか物損扱いかを確認する方法

発生した交通事故が人身扱いなのか、物損扱いなのかは「交通事故証明書」で確認することができます。ただし、警察への連絡を怠った場合は、交通事故証明書が発行されないので注意しましょう。

交通事故証明書には、以下のような情報が記載されています。

人身扱いまたは、物損扱いのどちらで処理されたかというのは、交通事故証明書の右下にある照合記録簿という項目に記載されています。

交通事故証明書の取得方法

交通事故証明書は、警察が発行しているのではなく、自動車安全運転センターが発行しています。また、交通事故証明書の申請ができる人は、交通事故の加害者や被害者、損害賠償の請求権が認められる親族、保険金の受取人などです。

交通事故証明書の取得方法は、以下の3つから選択することができます。

ゆうちょ銀行・郵便局での払込み

ゆうちょ銀行・郵便局での払込みで申請を行う場合は、以下のような流れで行います。

交通事故証明書の申請用紙1通で、同じ交通事故証明書を何通でも申請することができます。しかし、交通事故証明書を何通申請したかによって、手数料は変動します。

自動車安全運転センターの事務所窓口での申込み

自動車安全運転センターの事務所窓口から申し込む場合は、以下のような流れで行います。

先程同様、交通事故証明書の申請用紙1通で、何通も申請することもできますが、手数料は変動します。

自動車安全運転センターの事務所窓口での申込みをした場合、すでに警察署から交通事故資料が届いていれば、基本的に交通事故証明書は即日交付となります。もしも交通事故資料が警察署から届いていなければ、後日申請者の住所または、郵送希望宛先へ郵送されます。ただし、他県で発生した交通事故の場合は、後日郵送になってしまいます。

また、交通事故の発生場所に関係なく、最寄りの自動車安全運転センターの事務所で申請可能ですが、この場合も後日郵送となります。

自動車安全運転センターのサイトからの申込み

自動車安全運転センターのサイトからの申込みを行う場合は、以下のような流れで行います。

ただし、自動車安全運転センターのサイトから申込みを行うには、申請条件があります。その申請条件とは、「交通事故の当事者本人であること」「交通事故発生時に警察へ届出を出した住所が現住所であること」の2点です。したがって、申請条件を確認の上、交通事故証明書の申請を行うようにしてください。

人身扱いと物損扱いでは大きな違いが!

交通事故で軽い怪我を負った場合、「大した怪我ではないから、物損扱いでいいのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか。しかし、人身扱いと物損扱いでは、以下の2点で大きな違いがあります。

損害賠償

損害賠償とは、交通事故の被害者が負った損害を、加害者が金銭で埋め合わせを行うことです。この被害者に支払われる損害賠償額は、人身扱いと物損扱いによって、以下のように異なります。

事故の種類 支払われる損害賠償
人身事故 積極損害 治療費
手術費
通院交通費
付添看護費
器具や装具の購入費     など
消極損害 休業損害
逸失利益
慰謝料 入通院慰謝料
後遺障害慰謝料
死亡慰謝料
物損事故 モノに対する損害のみ 車の修理費
家の塀や門の修理費    など

上記のように、人身扱いの事故の場合は、怪我の治療にかかった費用だけでなく、慰謝料や仕事を休んだ分の給料を補填するための休業損害などの賠償金も請求することができます。

一方、物損扱いの事故の場合は、壊れたモノに対する費用しか請求できません。そのため、軽い怪我を負い、病院で治療を行ったとしても、その費用は被害者が負担することになります。また、物損扱いの事故で支払われる車の修理費は、修理にかかった費用全額が支払われるわけではありません。車の修理費は、時価額分(※1)のみの請求となるため、一部を被害者が自己負担しなければならない可能性もあります。

※1 時価額分とは、事故で壊れた車の現在の価値額のこと。

加害者が受ける処分

加害者が受ける処分には、民事処分・行政処分・刑事処分の3つがあります。

人身扱いの事故の場合、加害者はこの3つの処分全てを受けることになります。しかし、物損扱いの事故の場合、加害者は基本的に民事処分しか受けません。

物損扱いから人身扱いへ変更することは可能?

人身扱いの事故と物損扱いの事故では、先程ご紹介したように大きな違いがあらわれます。もしも間違えて、物損扱いにしてしまったといった場合は、人身扱いへの変更も可能です。

人身扱いの事故への変更手続き

物損扱いの事故を人身扱いの事故へ変更するには、以下のような流れで行います。

人身扱いの事故への変更手続きに必要な書類は、医師の診断書や運転免許証、車検証と自賠責保険証明書、事故車両または事故車両の写真です。また、シャチハタやゴム印ではない印鑑も持参する必要があります。

変更手続きを行う場合は期限に注意!

人身扱いの事故へ変更は、法的な期限が決められていません。しかし、変更手続きは、10日以内に行うことをおすすめします。

事故から時間が経ってしまうと、事故と怪我との因果関係を証明できず、診断書が取得できないため、人身扱いの事故に変更できなくなってしまいます。

人身扱いの交通事故についてのまとめ


いかがでしたか。人身扱いの事故と物損扱いの事故では、損害賠償加害者が受ける処分において違いがあります。そのため、発生した交通事故が、どちらで処理されているのかを交通事故証明書でしっかりと確認することが大切です。

もしも誤って物損扱いの事故で処理されていた場合は、10日以内に人身扱いの事故への変更手続きを行うようにしましょう。