細心の注意を払っていても、起こってしまう追突事故。追突事故を起こしてしまい、加害者になってしまった場合は、どのような対応をとるべきなのでしょうか。
今回は、追突事故後の対応や加害者が受ける処分について解説していきます。
追突事故を起こしてしまったら…
追突事故を起こし、加害者となってしまった場合、まずは以下3つの対応を行うようにしましょう。
- 2次災害の防止
- 負傷者の救護
- 警察への連絡
上記3つの対応は、道路交通法で定められた義務です。もしも加害者がこれらの対応を怠ってしまった場合は、法律に違反したことになり、処分を受けることになります。
具体的には、どのような対応を行わなければならないのでしょうか。
2次災害の防止
2次災害の防止とは、更なる事故の発生を防ぐことです。加害者は、発炎筒や三角表示板などを使って、後続車に事故の発生を伝えます。
もしも2次災害の防止を怠った場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられます。
負傷者の救護
加害者は事故で怪我を負った人がいないかを確認し、負傷者がいる場合は応急処置や救急車を呼び、負傷者の救護を行わなければなりません。
もしも負傷者の救護を怠った場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられます。
警察への連絡
警察への連絡は、事故が発生したことを警察に報告することです。以下のような内容を警察へ伝えるようにしましょう。
- 事故の発生日時と場所
- 死傷者の有無と負傷者の有無・負傷の程度
- 事故で破損したもの・破損の程度
- 事故後に行った対応 など
もしも警察への連絡を怠った場合は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
追突事故を起こした加害者の処分
追突事故を起こした加害者は、以下3つの処分を受けることになります。
- 民事処分
- 行政処分
- 刑事処分
ただし、人身事故と物損事故では、加害者が受ける処分が異なります。人身事故の場合、加害者は上記3つの処分を受けることになります。一方、物損事故の場合、加害者は行政処分や刑事処分は受けず、民事処分のみを受けます。
民事処分
民事処分とは、事故の被害者が負った損害を金銭で償うことをいいます。被害者に支払う金銭は、損害賠償と呼ばれ、以下の3つに分けられます。
- 積極損害
事故によって被害者の出費が余儀なくされた場合に発生する損害。
例)治療費、通院交通費、付添看護費、器具や装具の購入費 など - 消極損害
事故にあったことで、被害者の収入や利益が減少してしまった場合に発生する損害。
例)休業損害、逸失利益 - 慰謝料
事故にあったことで、被害者が受けた精神的苦痛の対価として支払うもの。
例)入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料
上記の損害賠償は、加害者が加入している自賠責保険(※1)や任意保険(※2)から被害者に支払われます。したがって、事故後は保険会社へ連絡するようにしましょう。
※1 自賠責保険とは、車を運転する人が加入を義務づけられている保険。交通事故の被害者を救済するために最低限(支払上限額120万)の保障を行う。
※2 任意保険とは、加入を任意で決められる保険。自賠責保険の支払上限額を超えた分を補償してくれる。
行政処分
行政処分とは、累積した免許の点数に応じて、免許停止や免許取り消しを行うことをいいます。点数が加算される条件は、事故を起こしたとき、道路交通法違反(※3)をしたときです。ただし、加算される点数は1~35点と様々で、事故や違反の内容によって変動します。
※3 道路交通法違反とは、スピード違反や信号無視、飲酒運転などの道路交通法に違反する行為のこと。
免許停止や免許取り消しは、以前に行政処分を受けた事実の有無で異なり、以下の通りです。
点数 / 前歴 | なし | 1回 | 2回 | 3回 |
---|---|---|---|---|
2点 | 免停90日 | 免停120日 | ||
3点 | 免停120日 | 免停150日 | ||
4点 | 免停60日 | 免停150日 | 取消1年(3年) | |
5点 | 取消1年(3年) | |||
6点 | 免停30日 | 免停90日 | ||
7点 | ||||
8点 | 免停120日 | |||
9点 | 免停60日 | |||
10~11点 | 取消1年(3年) | 取消2年(4年) | ||
12~14点 | 免停90日 | |||
15点~ | 取消1年(3年) | 取消2年(4年) |
※4(○年)は、免許の再取得ができない期間のこと。
刑事処分
刑事処分では、人身事故を起こした加害者が裁判で有罪判決を受けた場合、禁固や懲役、罰金といった刑罰を科せられます。
- 禁固:刑事施設に入る刑罰。ただし、刑務作業を行うかは選択自由。
- 懲役:刑事施設に入り、刑務作業を行う刑罰。
- 罰金:金銭を国に納める刑罰。
追突事故を起こした加害者は謝罪をすべき?
追突事故の加害者となった場合、被害者に対して行う謝罪は、任意で行うものです。しかし、謝罪を行わなければ、加害者に誠意がみられないという理由で、示談交渉(※5)が長引く可能性があります。したがって、示談交渉を長引かせたくない場合は、被害者に謝罪を行った方がよいでしょう。
※5 示談交渉とは、交通事故の加害者が、被害者に支払う損害賠償の金額を決めるために、当事者同士で行う話し合いのこと。
加害者が謝罪を行う場合、以下のような3つ手段があります。
- 手紙を書いて謝罪をする
- 電話で謝罪をする
- 訪問して謝罪をする
手紙を書いて謝罪をする
手紙を書いて被害者に謝罪を行う場合は、白無地の便箋と二重封筒を使用します。また、文字を書く際は丁寧に、誤字をした場合は新しい便箋に書くようにしましょう。
手紙で記載する内容の一例は、以下の通りです。
- 冒頭
表題を「謝罪文」とし、宛名に被害者の名前を「○○様」と記載 - 本文
事故を起こしたことを認める旨と謝罪の言葉
賠償については、具体的に提示するのではなく、誠心誠意という記載のみにとどめる
訪問ではなく、手紙で謝罪する旨の断りを入れる
事故で被害者が追った怪我に対する配慮の言葉
事故を再び起こさないための対策や決意 - 末尾
謝罪文を清書した日付
自分の署名
電話で謝罪をする
電話で謝罪をする場合、早朝または夜遅い時間帯は、被害者が迷惑に感じるかもしれません。そのため、電話をかけるときの常識的な時間帯にかけることをおすすめします。
また、電話で謝罪をする場合は、以下のような内容を伝えるようにしましょう。
- 事故を起こした事実を認める
- 誠意をもって謝罪の言葉を述べる
- 事故の被害者の怪我を気遣う
- 今後、誠心誠意をもって賠償する旨を伝える
訪問して謝罪をする
被害者のもとを訪ねて謝罪を行う場合、まずは電話で訪問日時を決めるようにしましょう。実際に訪問する際は、派手な服装を避け、焼き菓子やせんべいなどの菓子折りを持参します。
また、訪問時の謝罪の流れは、以下の通りです。
- 事故を起こし、迷惑をかけたことの謝罪を述べる
- 被害者の怪我についてお見舞いの言葉をかける
- 賠償については、誠心誠意対応する旨を述べる
- 菓子折りを渡す
- 再度、謝罪の言葉を述べる
追突事故後の加害者対応についてのまとめ
いかがでしたか。追突事故を起こしてしまった場合、まずは「2次災害の防止・負傷者の救護・警察への連絡」を行いましょう。この3つの対応は加害者の義務であり、怠った場合は刑罰を受けることになります。
また、手紙や電話、訪問といった手段で謝罪を行い、示談交渉を長引かせないように努めましょう。