走行中の車が停車中の車にぶつかることで起こる追突事故。もしも追突事故の被害者になってしまったら、どのような対処を取ればよいのでしょうか。今回は、追突事故の被害者がすべき対応方法や、追突事故で多い怪我「むちうち」について解説していきます。
もくじ
追突事故の被害者がすべき事
予期せぬ瞬間に突然起こる追突事故。いきなりの出来事に混乱し、どうすればいいか分からなくなる方も多いでしょう。
追突事故後に被害者がすべき事は、7つのポイントに分かれています。
- 1.警察へ連絡
- 2.加害者の情報を記録
- 3.保険会社へ連絡
- 4.必ず「病院」を受診
- 5.完治または症状固定まで通院
- 6.症状固定になったら後遺障害等級認定
- 7.加害者側の保険会社と示談交渉
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
1.警察へ連絡
追突事故が発生したら、まずは警察へ事故報告の連絡をしましょう。最寄りの警察署を調べる必要はありません。110番への連絡で大丈夫です。
警察への連絡を怠った場合のデメリット
事故発生後に警察へ連絡することは、道路交通法第72条で義務付けられています。もしも警察への連絡を怠った場合は法律違反となり、「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科せられます。
また、警察へ連絡しなかった場合、「交通事故証明書」を発行してもらうこともできません。交通事故証明書は、事故の事実を証明するための書類です。保険金を請求する際に必要となり、取得していない場合は保険金の支払いを受けることができません。
軽い追突事故の場合でも交通事故の当事者のみで解決しようとせず、必ず警察に連絡するようにしましょう。
2.加害者の情報を記録
追突事故の被害にあってしまったら、被害者は加害者本人や加害者側の保険会社とやり取りを行わなければ行けません。
加害者とやり取りを行うにあたって、加害者の情報が必須となります。しっかりとメモしておきましょう。
- 確認しておくべき加害者の情報
- 加害者の氏名、住所、電話番号
- 加害者が加入している自賠責保険会社
- 加害者が加入している任意保険会社
- 加害者の車両ナンバー
可能であれば、加害者が乗っていた車の所有者や、加害者の勤務先も確認しておきましょう。
事故現場の状況を記録
警察が到着すると実況見分によって事故現場の記録が行われますが、自分でも事故現場の状況を記録しておきましょう。記録方法としては、自分のスマートフォンで撮影しておくとよいです。
記録しておくべき情報は、以下の3つ。
- 事故現場の道路状況(交通量、道路についたタイヤ痕 など)
- 事故車両の破損箇所、他にも破損したものがあれば記録する
- 事故の目撃者がいれば連絡先を聞いておく
被害者自身が残した事故の記録や目撃者の情報は、有力な証拠として使うことができます。事情聴取の際に加害者の言い分と意見が食い違った場合は、撮影した写真や目撃者の証言を提示するとよいでしょう。
3.保険会社へ連絡
追突事故の被害者は、加害者に対して損害賠償金を請求することができます。損害賠償について詳しくは後述しますが、支払いを行うのは加害者側の保険会社です。
したがって、加害者が加入している保険会社へ事故の報告を行う必要があります。
自分の保険会社への連絡も忘れずに
損害賠償の支払いは基本的に加害者側の保険会社が行いますが、場合によっては自分の保険会社から支払いを受けることもあります。
追突事故の被害にあったら、加害者側の保険会社へ連絡するだけでなく、自分が加入している保険会社にも連絡しましょう。
4.必ず「病院」を受診
事故直後は体が興奮状態になるため、痛みを感じにくくなっています。したがって、追突事故から時間が経過した後に症状が現れることもあるのです。
追突事故にあったら、直後に痛みが現れなくとも病院を受診しましょう。
追突事故で多い怪我「むちうち」
追突事故による怪我は、「むちうち」が最も多いといわれています。むちうちは、後ろから追突された衝撃で首がむちのようにしなり、筋肉や靭帯が損傷されることで、様々な症状が引き起こります。
首や肩の痛み、背中のコリが主な症状といわれていますが、頭痛やめまい、腕のしびれや吐き気などが併発することもあります。
病院の整形外科で診断書を取得
追突事故でむちうちになった場合、まず最初に行くべき通院先は病院の整形外科です。整形外科では、医師が治療を行なっています。レントゲンやMRIでの検査、湿布や痛み止めなどの薬を処方してくれます。
また、整形外科を受診したら、医師に診断書の作成をしてもらいましょう。診断書には、怪我の病名や症状、治療期間の見通しなどが記載されています。診断書を取得することで、交通事故と怪我との因果関係を明確にすることができます。保険金を請求する際にも必要となるため、必ず取得するようにしましょう。
整骨院と併用して通院することも可能
むちうちは筋肉や靭帯の損傷であるため、レントゲンには症状が写らないことがあります。したがって、整形外科では異常なしと判断されてしまうこともあるようです。整形外科へ通院を続けても症状が緩和されない場合は、整骨院と併用して通院することを検討してもよいでしょう。
整骨院で受けられる施術
国家資格である柔道整復師が、主に手技療法を用いて施術を行なっています。また、電気や超音波などの物理エネルギーを使った「物理療法」や、体を動かすことで身体機能の回復を図る「運動療法」を用いることもあります。
整骨院では、柔道整復師が体に直接触れて施術を行うため、レントゲンやMRIでは見つけられなかった症状も見つけてくれる可能性が高まります。また、土日祝日も営業していたり、夜遅くまで施術を行なっている整骨院もあるため、自分の都合に合わせて通院することも可能です。
5.病院への通院は「完治」または「症状固定」まで
治療を続けていくうちに、「いつまで通院を続ければいいの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。通院が終了するのは、追突事故による怪我が「完治」、または「症状固定」の判断がされたタイミングです。
症状固定の判断ができるのは医師のみ
症状固定とは、怪我の症状がこれ以上緩和される見込みがなく、また悪化することもない状態のことをいいます。
症状固定の判断は、医師のみができます。保険会社に治療打ち切りを言い渡されることもありますが、痛みが残っている場合は医師に相談し、通院を続けるようにしましょう。
6.症状固定になったら後遺障害等級認定
症状固定となってしまった後は、加害者に対して治療費を請求することができなくなってしまいます。しかし、後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料を請求することができます。
後遺障害慰謝料は、1〜14級まである後遺障害等級に応じて、支払われる金額が異なります。
医師に後遺障害診断書を作成してもらう
後遺障害等級認定の申請を行うには、まず通院先の医師に後遺障害診断書を作成してもらいましょう。後遺障害診断書は、後遺障害等級認定の手続きに必要となる書類です。医師に症状固定の判断をされたタイミングで作成を依頼しましょう。
後遺障害等級認定は、後遺障害診断書の内容を基準に審査が行われます。内容が不十分であると判断された場合、後遺障害等級認定が非該当になってしまう可能性があります。後遺障害診断書を医師に作成してもらう際は、医師に自覚症状をしっかりと伝え、納得のいくものを作成してもらうようにしましょう。
後遺障害等級認定の申請方法
後遺障害等級認定の手続きには、
- 事前認定
- 被害者請求
以上2つの方法があります。
事前認定
事前認定は、後遺障害等級認定の手続きを、加害者側の保険会社に任せる方法です。被害者が加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出すると、後の手続きは保険会社が全て行なってくれます。
事前認定は加害者側の保険会社が手続きを行うため、被害者は手間を省くことができます。しかし、どのような内容で手続きが進んでいるのか、被害者は知ることができません。
被害者請求
被害者請求は、その名の通り、後遺障害等級認定の手続きを被害者自身が行う方法です。手続きに必要な書類を被害者自身で揃え、加害者側の保険会社に提出する必要があります。
被害者請求は慣れない手続きを自らで行わなければいけないため、事前認定に比べて時間と手間がかかってしまうでしょう。しかし、手続きの内容を把握し、納得しながら進めていけるというメリットがあります。また、必要書類の他に、後遺障害等級認定に有利になるような書類を付け足すこともできます。
7.加害者側の保険会社と示談交渉
示談交渉は、被害者に支払われる損害賠償の金額について、被害者と加害者側の保険会社が話し合いを行うことです。追突事故による怪我が完治した後、または後遺障害等級認定の審査結果が出た後に示談交渉を開始しましょう。
話し合いを行い、被害者と加害者側の保険会社が互いに和解・納得すると、示談成立となります。示談が成立すると、被害者に対して損害賠償の支払いが行われます。
▶︎参考:示談がスムーズに進まない場合の対処法について知りたい方はこちら!
被害者が受け取れる損害賠償
被害者に支払われる損害賠償は、
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
以上の3つに大きく分けられています。
積極損害
積極損害は、交通事故にあったことによって被害者の出費が余儀なくされた場合に発生する損害です。
治療費や入院費、手術費や通院交通費などを請求することができます。
消極損害
消極損害は、交通事故が原因で被害者の利益が減少してしまった場合の損害です。
消極損害は、「休業損害」と「逸失利益」に分けられています。
- 休業損害
- 逸失利益
交通事故が原因で仕事を休まなければいけなくなり、被害者の収入が減少してしまった場合、休業期間に得られるはずであった収入を請求することができます。
交通事故の怪我が後遺障害になってしまったことで被害者の労働能力が低下し、以前より収入が減少してしまった場合の差額分を補償してくれます。
慰謝料
慰謝料は、交通事故によって被害者が負った精神的苦痛を、加害者が金銭で補ったものです。追突事故によってむちうちを負った場合、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2つを請求できる可能性があります。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
交通事故による怪我で入院や通院をする際に、被害者が受けた精神的苦痛を、金銭で補ったもの。
交通事故の怪我が後遺障害になってしまったことで、被害者が受けた精神的苦痛を、金銭で補ったもの。
追突事故の示談交渉は保険会社が介入できない?
追突事故は、被害者の過失割合が0の場合がほとんどです。被害者に過失がない場合、被害者側の保険会社は示談交渉に関与することはできません。
したがって、被害者自身が、交通事故の手続きに慣れている加害者側の保険会社と示談交渉を行わなければいけません。
不安な場合は弁護士に対応を依頼
交通事故は、そう頻繁にあうものではありません。したがって、様々な手続きや保険会社とのやり取りに慣れている人は少ないでしょう。
示談は一度成立すると原則としてやり直しができないため、慎重に行う必要があります。「正しいやり取りの方法が分からない」「損をしたくない」などという方は、交通事故に詳しい弁護士へ対応を依頼するとよいでしょう。
弁護士に示談交渉を依頼すると、被害者に代わって加害者側の保険会社とのやり取りを行なってくれます。また、弁護士に対応してもらうことで、慰謝料を弁護士基準で請求することができます。弁護士基準で慰謝料を請求すると、損害賠償の金額を大幅に増額できる可能性があります。
追突事故の被害にあったら必ず病院へ!
いかがでしたか。追突事故にあってしまったら、警察や保険会社へ連絡し、必ず病院を受診しましょう。治療にかかった費用は、加害者に損害賠償として請求することができます。損害賠償を受け取ることができるのは、加害者側の保険会社との示談が成立した後です。示談交渉を一人で行うのが不安な場合は、弁護士に対応を依頼するとよいでしょう。