追突事故の被害にあった場合、怪我の治療を受けたり、保険の手続きを行ったりしなければなりません。しかし、事故の被害にあう経験は少ないため、「どのように進めていけばいいのかわからない。」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、追突事故の被害者がすべきことについて解説していきます。
追突事故の被害者が最初にすべきこと
信号待ちの停車中や急ブレーキなどが原因で起こり得る追突事故。追突事故の被害者になってしまった場合、まずは以下のことを行う必要があります。
- 安全の確保と負傷状況の確認
- 警察へ連絡
- 当事者同士で連絡先の交換
- 保険会社への連絡
安全の確保と負傷状況の確認
追突事故にあったら車を路肩に寄せたり、発炎筒や三角表示板を置くなどの対応をとり、安全を確保しましょう。安全の確保を怠ってしまうと、後続車は突然起こった事故に気づかず接触してしまう恐れがあり、2次災害が引き起こってしまいます。
また、自分や相手に怪我はないかを確認しましょう。もし怪我を負っている場合は、応急処置を行ったり、救急車を呼ぶ必要があります。
警察へ連絡
追突事故が発生した場合、必ず警察へ連絡しなければなりません。警察への連絡は、道路交通法で定められた義務です。そのため、警察への連絡を怠ってしまうと、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金を科せられます。
また、警察へ連絡することで「交通事故証明書」を取得できるようになります。この書類は、どのような事故がどこで起こったのかを証明するための書類で、損害賠償請求を行う際に必要になるものです。
当事者同士で連絡先を交換
事故後は当事者同士で、以下のような連絡先を交換する必要があります。
- 氏名
- 電話番号
- 住所
- 会社名
- 自動車の登録番号(ナンバープレートに記載)
- 加入している保険会社名 など
被害者は事故後、加害者側の保険会社と示談交渉を行うことになります。示談交渉とは、事故の加害者が、被害者に支払う損害賠償の金額を決めるために行う話し合いのことです。したがって、後で加害者に損害賠償を請求するためにも、必ず連絡先を交換するようにしましょう。
保険会社への連絡
追突事故の被害にあった場合、必ず保険会社へ連絡するようにしましょう。もし怪我を負っていた場合は、加害者に治療費を請求することもできます。治療費を請求する場合は、通院先に連絡をしなければならないため、必ず加害者側の保険会社へ連絡するようにしましょう。
追突事故による怪我の治療について
追突事故の被害にあうと、むちうちや打撲などの怪我を負う可能があります。事故による怪我を放置してしまうと、症状が悪化したり、後遺症が残ることもあるため治療を受けることをおすすめします。
先程も述べましたが、被害者は加害者に治療費を請求することができ、加害者の自賠責保険(※1)や任意保険(※2)を使って治療を受けることになります。自賠責保険や任意保険が適用される通院先は、以下のように3つあり、被害者は通院先を自由に選択することができます。
- 整形外科
- 整骨院
- 鍼灸院
※1 自賠責保険とは、自動車を所有する全ての人に、加入が義務付けられている保険のこと。人身事故のみが保険適用の対象で、被害者が受けた損害の最低限(120万円)を保障してくれる。
※2 任意保険とは、自動車を所有する人が任意で、加入を決めることができる保険のこと。自賠責保険の限度額を超えた分は、この任意保険から補償が得られる。
整形外科
整形外科では、医師免許を持つ医師が治療を行うため、MRIやレントゲンなどの検査、痛み止めや湿布の処方、手術などの治療を受けることができます。
また、整形外科では、加害者に治療費を請求する際に必要な「診断書」を取得することもできます。そのため、事故で怪我を負った場合は必ず整形外科へ行き、診断書を取得する必要があります。
整骨院
整骨院では、柔道整復師が骨折や打撲、捻挫、脱臼、挫傷を対象に施術を行います。柔道整復師は、投薬や手術などの治療行為ができないため、整復法、固定法、後療法の3つの方法で施術を行います。
具体的には、以下のような施術が受けられます。
- マッサージ
- コルセットやギプスなどの固定具を使った施術
- 電気療法
- 温熱療法
- 牽引 など
鍼灸院
鍼灸院では、はり師と灸師が施術を行います。体中に361箇所あるツボ(※3)をはりと灸で刺激していく施術です。はりと灸の刺激でツボを刺激することで、血行が促され、痛みを緩和することができます。
※3 ツボとは、血液やリンパ液などが通る道の集合体のこと。
被害者は加害者に損害賠償を請求できる
先程も述べましたが、被害者は、加害者に損害賠償を請求することができます。損害賠償とは、事故の被害者が負った損害を加害者が金銭で埋め合わせをすることをいいます。この損害賠償は、以下のように大きく3つに分類することができます。
- 積極損害:交通事故によって被害者が出費を余儀なくされたことに対する損害のこと。
例)治療費、通院交通費、付添看護費、器具や装具の購入費 など - 消極損害:交通事故が原因で、被害者の収入や利益が減少したことに対する損害。
例)休業損害、逸失利益 - 慰謝料:交通事故によって被害者が負った精神的苦痛の対価として、加害者が支払うもの。
例)入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料
上記のような損害賠償を加害者に請求する場合は、手続きが必要になります。手続き方法は、「加害者請求」または「被害者請求」で行うことになります。
加害者請求
加害者請求は、先に加害者が被害者に損害賠償金を支払い、その後で保険会社に保険金を請求する方法です。
被害者請求
被害者請求は、加害者側から賠償が受けられない際に、加害者が加入している保険会社に直接、損害賠償金を請求する方法です。
被害者請求で損害賠償を請求する場合、以下の書類が必要になります。
- 保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払請求書
- 人身事故で処理された交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 医師の診断書
- 診療報酬明細書
- 通院交通費明細書
- 請求者本人であることを証明するための印鑑証明書
- 付添看護自認書
追突事故の被害者が直面するトラブル
追突事故の被害者は、以下のようなトラブルに直面することがあります。
- 追突事故で負った怪我の治療費がすぐに必要な場合
- 追突事故で負った怪我が後遺症になった場合
- 保険会社に治療費の打ち切りを打診された場合
では、上記のようなトラブルが起きた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
追突事故で負った怪我の治療費がすぐに必要な場合
追突事故の被害者は、加害者に治療費を請求することができますが、請求した治療費が支払われるのは示談成立後です。そもそも示談交渉は、治療終了後に始まります。そのため、被害者は、治療費を立て替えなければなりません。
このように、被害者が治療費を立て替えるとなると、金銭的負担がかかってしまいます。被害者の治療費に対する金銭的負担を軽減させるには、「仮渡金制度」を活用することをおすすめします。
仮渡金制度とは、被害者がすぐに必要な治療費をまかなうためのお金が、早く受け取れるというものです。加害者が加入している保険会社に仮渡金制度で請求できる金額は、怪我の程度に応じて5万円・20万円・40万円となっています。
追突事故で負った怪我が後遺症になった場合
追突事故で怪我を負い、頭痛やめまい、しびれ、麻痺などの症状が後遺症になる場合もあります。その場合は、後遺障害等級認定を申請しましょう。後遺障害等級認定を申請することで、後遺障害慰謝料と逸失利益を加害者に請求することができます。
ただし、後遺障害等級認定で等級が認定されなければ、被害者は後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取ることができません。後遺障害等級認定で等級を認められるには、以下の5つの条件を満たしていなければなりません。
- 事故の状況と医師に申告した症状の程度が一致している
- 事故後から、医療機関への定期的な通院を続けている
- 事故後から訴えている症状が続いており、一貫性がある
- 症状の程度が重く、日常的に症状があらわれていることが認められる
- 画像検査や神経学的検査などで症状を医学的に説明できる
また、後遺障害等級認定の申請には、以下2通りの方法で請求することができます。
- 事前認定:加害者側の保険会社に後遺障害等級認定の申請を任せる方法
- 被害者請求:被害者自身が自賠責保険会社に後遺障害等級認定を申請する方法
保険会社に治療費の打ち切りを打診された場合
基本的に加害者は、被害者の怪我が完治または症状固定になるまで、治療費を支払わなければなりません。しかし、怪我の治療が終わっていないにもかかわらず、加害者側の保険会社に治療費の支払いの打ち切りを打診される場合もあります。
治療費の打ち切りを打診される原因としては、以下の通りです。
- 怪我の治療に、必要のない治療ばかりを行っている
- 通院頻度が少なく、治療の必要がないと認識された など
したがって、追突事故で怪我を負った場合は、上記のことに注意しながら通院することが大切です。正しく通院していたはずなのに、加害者側の保険会社に治療費の打ち切りを打診された場合は、以下のような対応をとるようにしましょう。
- 担当医から加害者側の保険会社に治療の必要性を説明してもらう
- 加害者側の保険会社との交渉を弁護士に依頼する など
追突事故の被害者についてのまとめ
いかがでしたか。追突事故の被害にあった場合、まずは安全の確保、警察への連絡などの事故後の対応を行うようにしましょう。その後、病院や整形外科で検査を行い、通院先を選択して治療を開始します。治療が終了したら示談交渉を開始し、損害賠償額を決めて請求手続きを行い、損害賠償を受け取るようにしましょう。