交通事故の怪我は、後から痛みがあらわれることはよくあることです。後から痛みがあらわれた場合、何をすべきかわからず、不安になりますよね。そこで今回は、事故から数日経って痛みがあらわれる原因やすべき対応、注意点などについて解説していきます。
もくじ
交通事故の怪我は後から痛みがあらわれる?
交通事故で負う怪我は、後から痛みがあらわれたという方が多く見受けられます。その理由としては、事故直後の体は興奮状態になってしまうためです。
体が興奮状態になってしまうと、アドレナリンやβエンドルフィンといった鎮痛作用のある物質が分泌されます。そのため、事故直後ではなく、時間が経ってから痛みがあらわれることもあるのです。
交通事故の後にあらわれる症状の例
交通事故後にあらわれる症状は、1つだけではありません。そもそも交通事故で負う可能性のある怪我は、打撲や骨折、むちうち(頚椎捻挫)など様々です。
例えば、交通事故後には、以下のような症状があらわれる傾向があります。
- 首や背中、腰の痛み
- 肩こり
- 頭痛
- 吐き気
- めまい
- 耳鳴り など
上記のような症状が事故後にあらわれた場合、むちうち(頚椎捻挫)の可能性があります。むちうちとは、交通事故の衝撃で首が鞭のようにしなり、首周辺の筋肉や靭帯などの軟部組織が損傷した状態です。また、神経の圧迫や損傷によって引き起こる症状は、後遺症が残ることがあります。
また、むちうちとは別に、以下のような症状があらわれることもあります。
- 腰や背中、首の痛み
- 腰の違和感
- 片方の腕や手のしびれ
- 握力の低下
- 頭痛
- 眼精疲労 など
上記のような症状があらわれた場合、椎間板ヘルニアの可能性があります。椎間板ヘルニアとは、椎間板が事故の衝撃で本来あるべき位置からズレてしまった状態です。椎間板ヘルニアの場合、後遺症が残ることもあるため、注意が必要です。
交通事故で後から痛みがあらわれた場合の手続き
交通事故直後ではなく、しばらく経ってから痛みがあらわれた場合、物損事故(※1)で処理されている可能性があります。怪我人がいる場合は、人身事故(※2)で処理しなければなりません。物損と人身のどちらで処理されているかは、交通事故証明書によって確認することが可能です。
※1 物損事故とは、怪我人がおらず、モノのみが壊れた事故のことです。
※2 人身事故とは、怪我人がいる事故のことです。また、怪我人がいて、モノも壊れている場合は人身事故で処理します。
交通事故証明書で確認した際に、物損で処理されていた場合は、以下の手順で人身事故へ切り替えるようにしましょう。
- 病院へ行って診断書を取得する
- 人身事故に切り替えたい旨を警察署へ連絡する
- 事情聴取と実況見分を行う
病院へ行って診断書を取得する
人身事故に切り替える場合、交通事故が原因の怪我であることを証明する「診断書」が必要です。ただし、診断書は医師が書いたものでなければいけません。したがって、総合病院や整形外科へ行くことをおすすめします。
人身事故に切り替えたい旨を警察署へ連絡する
人身事故へ切り替える際は、事故が起きた現場を管轄する警察署に、前もって連絡することが大切です。
そもそも人身事故の切り替え手続きは、事故当時の状況や事情を把握している、事故処理を担当した警察官が行います。いきなり警察署へ行っても、事故処理を担当した警察官が不在ということもあり得ます。
したがって、人身事故の切り替えを行う場合は、事前に警察署へ連絡をするようにしてください。
事情聴取と実況見分を行う
物損事故から人身事故へ切り替える際は、「交通事故によって怪我を負った」ということを証明できなければいけません。そのため、事故の当事者に事情聴取と実況見分を行うことになります。
事情聴取とは、交通事故の当事者に事情や状況を聞き取る調査のことをいいます。一方、実況見分とは、事故が起こった現場に行き、交通事故がどのような原因で発生したのか、結果どうなったのかを記録することをいいます。そのため、事故現場の写真を撮影したり、ブレーキ痕を測定することになります。
事情聴取と実況見分の結果、人身事故と認められれば、切り替えが行われます。切り替え事実の確認は、後日発行される交通事故証明書で確認することができます。
人身事故の切り替え期限には注意!
人身事故の切り替えの法的期限は定められていません。しかし、交通事故発生から時間が経ってしまうと、事故と怪我の因果関係が疑われることもあります。したがって、人身事故への切り替えは、事故発生から10日以内に行うことをおすすめします。
ただし、人身事故への切り替えができなかったとしても、人身事故証明書入手不能理由書を保険会社に提出することで、人身事故として扱ってくれます。人身事故証明書入手不能理由書は、保険会社の担当者から受け取る書類であるため、まずは保険会社へ連絡するようにしましょう。
後から痛みを感じた場合は放置してはいけない!
交通事故の数日後に痛みがあらわれた場合、被害者にとって以下2つのデメリットが生じる可能性があります。
- 十分な損害賠償は受け取れない
- 過失割合で揉める可能性がある
十分な損害賠償は受け取れない
交通事故から数日後に痛みがあらわれた場合、十分な損害賠償を受け取れない可能性があります。先程も述べましたが、後日痛みがあられた場合、物損事故ではなく人身事故に切り替えなければなりません。このように人身事故への切り替えを行うべき理由は、物損事故のままでは、十分な損害賠償が受け取れないためです。
人身事故と物損事故で加害者側に請求できる損害賠償は、以下のように異なります。
人身事故 | 積極損害 | 治療費 手術費 通院交通費 器具や装具などの購入費 付添看護費 など |
---|---|---|
消極損害 | 休業損害 逸失利益 |
|
慰謝料 | 入通院慰謝料 後遺障害慰謝料 死亡慰謝料 |
|
物損事故 | 壊れたモノに対する費用のみ | 修理費 買い替え費用 代車料 など |
上記のように、人身事故の場合、事故で負った怪我に対するお金が支払われます。一方、物損事故の場合、壊れたモノに対する費用しか請求できず、事故で負った怪我に対するお金は受け取れません。したがって、怪我の治療費を自分で負担することになります。
また、物損事故のままでは事故が原因で後遺症が残ったとしても、後遺障害等級認定が受けられません。そのため、後遺障害慰謝料や逸失利益も受け取れないことになります。
過失割合で揉める可能性がある
物損事故の場合、人身事故とは異なり、実況見分調書は作成されません。実況見分調書とは、以下の内容が記載された書類です。
- 事故発生日時
- 実況見分を行った日時
- 事故当事者の氏名
- 供述の内容
- 事故の発生状況の見取り図
- 発生した事故に関する写真 など
上記の内容が記載された実況見分調書が作成されなければ、事故の状況を客観的に記した証拠がないことになります。そのため、過失割合(※3)を決める際に、記憶している事故状況に食い違いが生じ、被害者と加害者が揉めてしまう可能性があります。
※3 過失割合は、発生した事故に対して、事故当事者双方ある責任の割合のことです。過失割合によって損害賠償が減額されるため、とても重要な数字になります。
交通事故の示談が成立した後の痛みは要注意
交通事故の当事者同士の示談が成立した後に、「痛みがある」「後遺症が判明した」といっても、基本的には示談をやり直すことはできません。
示談とは、被害者に支払われる損害賠償の金額について、お互いが和解・納得するために行う話し合いです。示談成立となった場合、お互いに納得したということになるため、示談をやり直すことは難しいです。そのため、示談後の痛みや後遺症に対して、加害者側に損害賠償を請求することはできません。したがって、示談を行う場合は慎重に行うことが大事です。
後から痛みを感じる交通事故の怪我のまとめ
いかがでしたか。交通事故の直後の体は興奮状態になるため、後から痛みがあらわれることもあります。このような場合、事故直後には痛みがないため、物損事故で処理してしまったという方もいると思います。
しかし、物損事故のままでは、怪我に対する損害賠償を加害者側に請求することができません。このように事故直後ではなく、後から痛みがあらわれた場合は、物損事故から人身事故への切り替えを行うことが大切です。