交通事故の刑事処分には何がある?刑罰を受けるまでの流れとは

2018年11月13日

もしも自分が、交通事故の加害者になってしまったら、「民事処分」「行政処分」「刑事処分」という、3つの法的責任を負わなければいけません。

今回は、交通事故の加害者が刑事処分で下される刑罰の種類や、刑事処分を受けるまでの流れについて詳しく知りたい方は、ぜひこの記事をご覧ください!

交通事故の刑事処分とは

交通事故における刑事処分とは、自動車の運転によって人を死傷させてしまった場合に、加害者へ下される罰金刑や懲役刑のことをいいます。

刑事処分は人身事故のみ

交通事故は、「人身事故」と「物損事故」の2つに分けることができます。

  • 人身事故
  • 交通事故によって怪我人や死亡者が発生する事故。

  • 物損事故
  • 交通事故による死傷者は発生せず、車や公共物などのモノのみが破損する事故。

交通事故の加害者が刑事処分を負わなければいけないのは、人身事故として処理した場合のみです。物損事故として処理された場合は、加害者に対する刑事処分はありません。

罰金刑と自由刑

交通事故の刑事処分で加害者に下される刑罰は、「罰金刑」と「自由刑」の2つに分かれています。

罰金刑

罰金とは、交通事故の加害者から強制的に金銭を取り立てる刑罰のことをいいます。

交通事故の刑事処分で罰金刑を言い渡された場合、罪の重さに応じて「罰金」を支払わなければいけません。

自由刑

自由刑とは、加害者の自由を大きく制限する刑罰のことをいい、「拘留」「禁固」「懲役」に分かれています。

  • 拘留
  • 1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘置するもの。

  • 禁固
  • 30日以上、刑事施設に収容されて身柄を拘束されるもの。

  • 懲役
  • 30日以上刑事施設に収容され、刑務作業を行うもの。

懲役や禁固には、執行猶予がつくこともあります。執行猶予期間を問題なく過ごせた場合、加害者が刑事施設に入る必要はなくなります。

▶︎参考:交通事故で執行猶予がつく条件とは?

刑事処分以外の法的責任

交通事故の加害者は、刑事処分の他に、「民事処分」「行政処分」を受けなければいけません。

民事処分と行政処分、それぞれどのような内容なのか、詳しく見ていきましょう。

民事処分

民事処分とは、交通事故の被害者が負った損害を、金銭で賠償することをいいます。一般的に、「損害賠償」といわれるものです。

加害者が被害者に対して支払う損害賠償は、大きく分けて3つ。

  • 積極損害
  • 交通事故の被害者が、出費を余儀なくされた場合の損害に対して支払う。

  • 消極損害
  • 交通事故によって、被害者の収入や利益が減ってしまった場合の損害を補償。

  • 慰謝料
  • 交通事故で被害者が受けた精神的苦痛を補償。

▶︎参考:損害賠償の請求方法や計算の仕方について、詳しく知りたい方はこちら!

行政処分

行政処分とは、公安委員会が交通事故の加害者に対して、運転免許の取り消しや停止、反則金などの処分を下すことです。

行政処分は、過去3年間分の交通違反による違反点数が、一定の点数を超えた場合に科せられます。

交通事故の刑事処分による刑罰

ここでは、交通事故の刑事処分で加害者に下される刑罰の内容を、詳しく解説していきます。

過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪は、交通事故の加害者が受ける刑事処分として、最も一般的な刑罰です。運転者が自動車の運転に必要な注意を怠ったことによって、人を死傷させてしまった場合に適用されます。

「自動車の運転に必要な注意を怠る」とは具体的に、前方不注意やわき見運転、軽度なスピード違反などがあります。

過失運転致死傷罪で加害者に与えられる刑罰は、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金刑です。

危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪は、自動車の危険な運転によって人を死傷させた場合に適用されます。

「自動車の危険な運転」とは、具体的に以下のようなものがあります。

  • 飲酒運転や薬物使用によって、正常な運転が困難な状態
  • 高速運転での信号無視
  • 制御困難な高速での運転

危険運転致死傷罪で加害者に与えらえる刑罰は、被害者が怪我をしたのか、死亡しているのかで異なります。
被害者が怪我をした場合は、15年以下の有期懲役となり、死亡している場合は、1年以上20年以下の有期懲役が下されます。

交通事故の加害者が刑事処分を受ける流れ

刑事処分の内容について、お分かりいただけたでしょうか。

交通事故が発生してから、加害者が刑事処分を受けるまでの流れは、以下の通り。

  • 1.警察による取り調べ
  • 2.検察庁からの呼び出し
  • 3.検察庁が起訴・不起訴の判断
  • 4.裁判を行い、判決を言い渡される

それでは、一つひとつ見ていきましょう。

1.警察による取り調べ

交通事故発生後は警察が事故現場に来て、交通事故当事者から事情聴取を行います。事情聴取が行われたら、事故状況をまとめた実況見分調書が作成されます。

警察による取り調べでは、供述調書の作成も行われます。供述調書とは、犯罪の疑いをかけられた被疑者の供述を記録した書面であり、供述証拠として使われるものです。

2.検察庁からの呼び出し

実況見分調書や供述調書が検察庁に送られると、検察庁から被疑者に呼び出しがかかります。

検察庁からの呼び出しでは、警察の取り調べが適切なものであったかどうかが確認されます。自身の言い分と違う点や疑問に思う部分があれば、具体的に述べるようにしましょう。

3.検察庁が起訴・不起訴の判断

検察庁での取り調べが終了すると、検察官によって起訴・不起訴の決定がなされます。

起訴とは、検察官が被疑者を裁判にかけるために、裁判所へ申請を行うことです。不起訴は、検察官による起訴が行われないことをいいます。

4.裁判を行い、判決を言い渡される

裁判が始まると、被疑者から被告人という名称に変わります。月に1回程度のペースで審理が行われ、順調に進んだ場合は約2ヶ月程度終了します。

裁判による審査が終了すると、裁判官から判決の言い渡しが行われ、刑罰の内容が決定します。執行猶予判決では刑務所へ入る必要はありませんが、実刑判決となった場合、加害者は刑務所へ行かなければいけません。また、罰金刑となった場合は、基本的に一括で罰金を支払わなければいけません。

【疑問】交通事故の被害者は刑事裁判に参加できる?

交通事故の加害者が刑事裁判になったとき、被害者は被害者参加制度を使うことで、裁判に参加することが可能です。

被害者参加制度を利用する流れは、以下の通り。

  • 担当の検察官に被害者参加を希望する旨を伝える
  • 検察官は被害者参加を認めるべきなのかの意見をつけ、裁判所に通知する
  • 裁判所は被告人やその弁護士の意見を踏まえて、被害者の参加を認めるかの判断する

このような、流れを経て、裁判所から参加を認められると「被害者参加人」として裁判に参加できます。

交通事故の被害者ができる刑事告訴とは?

交通事故で刑事裁判を起こすには、加害者を起訴しなければなりません。そして、加害者を起訴できる権限をもっているのは、検察官のみです。

しかし、被害者には刑事告訴をするという手段をとることができます。刑事告訴とは、被害者が加害者を処罰して欲しいと意思表示のことです。刑事告訴できるのは、基本的に被害者本人のみです。

刑事告訴を行うと必ず起訴されるのか?

被害者が刑事告訴をした場合、事情が考慮されて起訴される可能性が高くなりますが、必ず起訴されるというわけではありません。

刑事告訴は、あくまで意思表示です。起訴・不起訴の判断する際に考慮されますが、最終的に起訴の判断をするのは、検察官です。刑事告訴をしても、検察官が不起訴と判断した場合は、不起訴になってしまいます。

▶︎あわせて読みたい:不起訴と判断された場合に、不服の申し立てをする方法!

交通事故の被害者が刑事告訴する方法

交通事故の被害者が刑事告訴をする場合、以下の手続きを行うことになります。

  • 告訴状の作成
  • 証拠の提出
  • 告訴状の受理

告訴状の作成

告訴状は、加害者を処罰して欲しいという意思を記した書類です。告訴状に記載することは「交通事故の発生日時・場所・交通事故の内容・当事者の名前など」です。

証拠の提出

刑事告訴をする場合、告訴状を受理した後に行う捜査のために必要な証拠を提出しなければなりません。証拠を提出しても、告訴状を受理してもらうことは難しいです。

証拠となる書類は、「交通事故証明書・現場写真・診断書・通院記録・発生した損害の内容など」です。

告訴状の受理

告訴状は受理されなければ、刑事告訴をしたことにはなりません。しかし、告訴状を受理されるのは難しく、明確な証拠書類を提出すること説得力のある告訴状になるようにすることが大切です。

反対に、加害者の刑事処分を減刑することも可能

裁判による審査で、加害者に対する刑罰を減刑するための対策方法は、2つ。

  • 示談を終了させておく
  • 嘆願書の提出を依頼

それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。

示談を終了させておく
交通事故の刑事処分では、被害者の心情が影響しやすいといわれています。
被害者との示談が成立していて、損害賠償の支払いが終了している場合は、「被害者が受けた損害の補償が完了している」とみなされ、減刑できる可能性があります。

嘆願書の提出を依頼
嘆願書とは、加害者に対して厳しい罰が下ることを望まない被害者が、作成する文書です。
被害者が、検察官または裁判所に嘆願書を提出すると、加害者に対する刑罰が減刑できる可能性があります。

▶︎参考:嘆願書について詳しく知りたい方はこちら

交通事故の刑事処分についてまとめ

交通事故の加害者が負う刑事処分について、お分かりいただけたでしょうか。
もしも刑事処分を受けてしまった場合、加害者には前科がついてしまいます。前科がつき、今後の将来に悪影響が及ぶことを避けるためにも、日頃の安全運転を心がけるようにしましょう。