交通事故後に怪我人がいる場合、人身事故として処理されることになります。人身事故の加害者になってしまうと、様々な処分を受ける可能性があり、「罰金の支払いを要求されるのかな?」と不安に思う方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、人身事故の加害者で「罰金なし」の場合はあるのかについて解説していきます。
もくじ
人身事故の加害者が支払う罰金は刑事処分
人身事故の加害者が負う罰金刑は、刑事処分にあたります。刑事処分とは、犯罪を犯した人に懲役刑や禁固刑、罰金刑を科す処分のことです。
- 懲役刑:刑事施設に入り、必ず刑務作業を行わなければならない
- 禁固刑:刑事施設に入るが、刑務作業を行うことを任意で決められる
- 罰金刑:有罪判決を受けた者が金銭を国に納める
人身事故を起こしたときの罰金の相場
人身事故を起こしてしまった場合に支払う罰金は、以下のように罪の重さや被害者の怪我の程度によって異なります。ただし、罰金刑ではなく、懲役刑や禁固刑になることもあります。
罪の重さで異なる罰金の相場
自動車運転過失致死傷罪(※1) | 7年以下の懲役もしくは禁固 または100万円以下の罰金 |
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緊急措置義務違反(※2) | 5年以下の懲役 または50万円以上の罰金 |
※1 自動車運転過失致死傷罪とは、 自動車を運転する上で必要な注意を怠ったことで、人に怪我を負わせたり、死亡させた場合に問われる罪のこと。
※2 緊急措置義務違反とは、怪我人の救護や危険防止措置、警察への連絡を怠った場合に問われる罪のこと。ただし、警察への連絡を怠った場合は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金となっている。
怪我の程度で異なる罰金の相場
怪我の程度 | 刑事処分 |
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治療期間3ヶ月以上 後遺障害あり |
懲役刑・禁固刑または 罰金30万円~50万円 |
治療期間30日以上 3ヶ月未満 |
罰金20万~50万円 |
治療期間15日以上 30日未満 |
罰金15~30万円 |
治療期間15日未満 または物損事故 |
罰金12~20万円 |
人身事故の加害者で罰金なしはあり得る?
人身事故の加害者で「罰金なし」となることもあります。「罰金なし」となる条件としては、被害者が負った怪我の治療期間が21日以下の場合です。このような軽微な人身事故の場合、原則的に不起訴となるため、加害者は罰金を支払わなくてもよいということになります。
また、刑事処分で罰金刑ではなく、懲役刑や禁固刑で執行猶予付きの判決だった場合は、いずれの刑罰も受けなくて済む可能性があります。なぜならば執行猶予付きの判決では、執行猶予期間を終えると、懲役刑や禁固刑の効力が失われるためです。また、執行猶予付きの判決であれば、刑事施設に行く必要がなく、今まで通りの生活を送ることができます。
ただし、執行猶予期間中に犯罪を犯してしまうと執行猶予が取り消され、刑事施設に入ることになるため、注意しなければなりません。
人身事故の罰金はいつ・どのように支払うのか
人身事故の罰金は、決められた支払い期日までに、検察庁に納めなければなりません。ただし、支払期日は正式裁判と略式裁判によって、以下のように通知の方法が異なります。
- 正式裁判:裁判で判決が言い渡される際に、罰金の金額と支払い期日が通知される
- 略式裁判:裁判所から送られてくる罰金の振込用紙に、金額と支払い期日が記載されている
罰金は高額になる場合も多いですが、基本的に現金一括で支払わなければなりません。また、罰金の支払いを保険で賄うこともできないため、自費で支払うことになります。
罰金の支払いが困難な場合はどうすればいい?
罰金の支払いが困難な場合は、検察庁の徴収事務担当に相談することをおすすめします。検察庁の徴収事務担当に、罰金の支払いが困難な旨を伝えることで、支払期日の延長や分割支払いに応じてくれることもあります。
また、弁護士に相談して、罰金の支払いの対処法を提案してもらうのもよいでしょう。
【疑問】罰金を支払わなかったらどうなる?
支払い期日までに罰金を支払わなかった場合は、検察庁から連絡がきたり、督促状(とくそくじょう)が送られてきます。
このような状況になっても、罰金を支払わないようであれば、資産(家や車など)を強制的に差し押さえられてしまいます。それでも罰金を支払う資力がない場合は、労役(※3)を行わなければなりません。労役を行うと日当が支払われるため、労働によって罰金を支払うことが可能です。
労役で支払われる日当は、基本的に1日5000円が支払われます。したがって、10万円の罰金の場合は、20日間労役を行う必要があります。
ただし、労役を行える期間は2年までと決められています。そのため、罰金が高額な場合は、2年以内に完済できるような日当の金額が設定されます。
人身事故で罰金刑を科せられると前科がつく?
前科とは、有罪判決を受け、何かしらの刑罰を受けたことを意味します。そのため、人身事故で罰金刑を科せられた場合、前科がつくことになります。前科がついてしまうと、以下のような影響を受けてしまいます。
- 医師や弁護士、柔道整復師の免許を取得できない
- 国家公務員や地方公務員の職に就くことができない など
人身事故における罰金についてのまとめ
いかがでしたか。人身事故の加害者は、必ずしも罰金刑を受けるというわけではありません。軽微な人身事故の場合は、原則不起訴となることもあるため、罰金刑を科せられない場合もあります。
人身事故の加害者が科せられる罰金は、罪の重さや被害者が負った怪我の程度で異なり、高額なお金を支払わなければならない可能性もあります。また、罰金を支払わなければ、資産を差し押さえられたり、労役を行わなければなりません。
ただし、罰金の支払いが困難な場合、検察庁の徴収事務担当に事前に相談することで、支払期日の延長や分割支払いに応じてくれることもあります。罰金の支払えない場合は、なるべく早く検察庁の徴収事務担当に相談するようにしましょう。