【損しないために】交通事故で使える保険と示談までの流れ

2019年02月01日

交通事故で発生した様々な問題は、相手との示談が成立することで解決します。示談が成立すると、加害者側の保険会社から被害者に対して、示談金が支払われます。

今回は、交通事故が起きてから示談が成立するまでの流れや、被害者が使える交通事故の保険について解説していきます。

交通事故発生から示談までの流れ

交通事故が起きてから示談成立までの流れは、以下の通りです。

  • ①交通事故発生
  • ②負傷者の救護
  • ③警察(110番)へ連絡
  • ④加害者の身元確認
  • ⑤事故当時者双方の保険会社へ連絡
  • ⑥怪我の治療
  • ⑦治療終了(完治)または症状固定(後遺障害等級認定)
  • ⑧加害者側の保険会社との示談交渉
  • ⑨示談成立(不成立の場合は裁判)

交通事故後必ずすべきこと3つ

上記の流れの中で、交通事故直後に被害者が必ずすべきことは、3つあります。

  • ①警察へ連絡
  • ②加害者の身元確認
  • ③保険会社への連絡

警察へ連絡

交通事故発生後に警察へ連絡することは、道路交通法の第72条によって定められています。もしも警察への連絡を怠ってしまった場合、「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」を課せられる可能性があります。

警察への連絡は、必ずしも被害者が行うというわけではありません。被害者が大きな怪我を負っていて警察への連絡が困難な場合は、加害者や目撃者が連絡しましょう。

加害者の身元確認

交通事故後の様々な手続きをスムーズに進めるためにも、加害者の身元確認は大切です。
相手の電話番号や会社名、住所、車のナンバーを記録しておきましょう。余裕がある場合は、相手が加入している任意保険会社名や自賠責保険会社名も聞いておきましょう。

記憶だけでは忘れてしまう可能性があるため、しっかりとメモしたりスマホで撮影しておくことが重要です。

保険会社への連絡

交通事故後のやり取りは相手側の保険会社と行うため、保険会社への連絡も忘れてはいけません。加害者の保険会社だけでなく、自身の保険会社へも連絡しておきましょう。
示談金の支払いを行うのは基本的に加害者側の保険会社ですが、被害者自身の任意保険を使用することもあります。

被害者が使える保険①加害者の自賠責保険

交通事故の被害者が使える保険は、まず1つ目に加害者側の自賠責保険があります。
ここでは、自賠責保険の補償内容や請求方法について解説していきます。

自賠責保険とは

自賠責保険の正式名称は、「自動車損害賠償責任保険」といいます。自賠責保険は法律によって加入が義務付けられており、未加入の場合は「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が課せられます。

自賠責保険の補償内容

自賠責保険は、人身事故で怪我を負ったり死亡してしまった被害者にのみ適用されます。したがって、自動車や公共物の破損のみの物損事故には適用されません。

自賠責保険の支払限度額は、被害者が負った損害の程度によって異なります。
傷害の場合は120万円、死亡の場合は3000万円、後遺障害の場合で介護を要する場合は3000~4000万円、1~14級の後遺障害等級に応じて75~3000万円が支払われます。

請求方法

自賠責保険の請求方法は、「被害者請求」と「加害者請求」の2つあります。それぞれの手続き方法を詳しく見ていきましょう。

被害者請求

被害者請求は、被害者自身が加害者側の自賠責保険会社に対して、直接保険金の請求を行う方法です。

手順としては、まず被害者が加害者側の自賠責保険に連絡をし、被害者請求を行う旨を伝えます。もしも加害者側の自賠責保険が分からない場合は、自動車安全センターで発行してもらえる「交通事故証明書」を確認しましょう。

自賠責保険会社に連絡をすると、被害者請求に必要な書類一式が送られてきます。他にも、被害者自身が取り寄せなければならない書類もあります。

被害者請求に必要な書類は、以下の通り。

    自賠責保険から送られてくる書類

  • 自賠責保険金等支払請求書
  • 事故発生状況報告書
    被害者自身が用意する書類

  • 印鑑証明書
  • 交通事故証明書
  • 診断書
  • 診療報酬明細書
  • 損害を証明する書類(通院交通費明細書や休業損害証明書など)

以上の書類を揃えたら、加害者側の自賠責保険会社へ送付します。被害者の損害については自賠責損害調査事務所が調査を行い、自賠責保険会社へ報告します。自賠責保険は調査結果に基づいて、被害者に対して賠償金の提示を行います。

加害者請求

加害者請求は、加害者本人が被害者に損害賠償の支払いを行った後、加害者が自身の自賠責保険に対して保険金の請求を行う方法です。加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険が自賠責保険の負担分も一括して、被害者に支払います。その後、任意保険が自賠責保険に対して、自賠責保険の負担分を加害者請求します。

被害者が使える保険②加害者の任意保険

交通事故の被害者は、加害者側の自賠責保険のほかに任意保険から支払いを受けることもできます。任意保険は自賠責保険とは異なり、法律によって加入が義務付けられていません。名前の通り、運転者の任意によって加入することができます。

交通事故の被害者に適用される任意保険は、「対人賠償保険」と「対物賠償保険」の2つあります。

対人賠償保険

対人賠償保険は、交通事故によって人が死傷した場合に使用されます。支払われる保険金額に限度はありませんが、他人の損害に対してのみ支払われるため、自分の家族には適用されません。

対物賠償保険

対物賠償保険は、被害者の車両や建物など、モノに損害が及んだ場合に適用される保険です。

被害者が使える保険③自身の任意保険

交通事故の保険は、加害者の保険だけでなく被害者自身の任意保険を使用することもあります。

被害者自身の任意保険で使用できる保険は、以下の通りです。

  • 搭乗者傷害保険
  • 人身傷害補償保険
  • 自損事故保険
  • 無保険車傷害保険

搭乗者傷害保険

搭乗者傷害保険では、交通事故の被害にあった運転者や同乗者に対して保険金が支払われます。対人賠償保険や対物賠償保険は相手に対して適用される保険ですが、搭乗者傷害保険は自分の損害を補償するものです。

人身傷害補償保険

人身傷害補償保険は、人身事故で自分や家族が死傷してしまった場合に支払われます。被保険自動車に限らず、契約車両以外で人身事故にあった場合や、歩行中の人身事故にも適用されます。

交通事故の損害賠償は、被害者にも過失が認められている場合、過失割合に応じて支払われる損害賠償金が減額されます。しかし人身傷害補償保険では、過失の有無に問わず損害賠償金の支払いを受けることができます。

自損事故保険

交通事故は、必ずしも相手がいるとは限りません。自損事故保険では、「自動車がガードレールに擦れて破損した」「電柱にぶつかってしまった」などの相手がいない交通事故に対して、保険金が支払われます。

無保険車傷害保険

無保険車傷害保険は、加害者が対人賠償保険に未加入で、十分な補償を受けられない場合に、被害者に対して不足分が支払われる保険です。

損せずに保険金を受け取るために

被害者が損害賠償金を受け取ることができるのは、加害者側の保険会社との示談成立後です。示談交渉では、被害者と加害者側の保険会社が、被害者に対して支払われる損害賠償金額について話し合いを行います。そして、お互いが納得し和解すると示談成立となります。

それでは、被害者に対して不利益が生じることなく示談を成立させるには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

痛みが残っている場合は治療を続ける

怪我の治療が長引くと、加害者側の保険会社が治療打ち切りを打診してくる可能性があります。治療が打ち切られてしまうと、被害者はその後の治療費を請求することができません。

保険会社に治療打ち切りを打診された場合でも、体に何らかの違和感や痛みが残っている場合は、治療を止めてはいけません。通院先の医師に相談し、治療を継続したい旨を伝えましょう。

納得できないまま示談しない

示談交渉で保険会社から提示された金額に納得できない場合は、示談を成立させてはいけません。一度成立した示談は、原則としてやり直しが効かないため、被害者が損をしてしまう可能性があります。

保険会社の対応を弁護士に依頼する

示談交渉を弁護士に依頼すると、保険会社への対応を弁護士が行ってくれます。被害者自身が複雑な手続きを行う必要もありませんし、示談金が増額できる可能性もあります。ただし、弁護士に対応を依頼することで、弁護士費用が発生します。弁護士費用は弁護士特約に加入していることで補ってもらうことができるため、自身の保険内容を確認しておきましょう。

交通事故の保険についてまとめ

交通事故の被害者が使用できる保険について、お分かりいただけたでしょうか。交通事故は、いつなんどき起こるか誰も把握できません。自身が加入している保険や使用できる保険を確認することで、損することなく賠償金を受け取ることができます。